ユーザー事例

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 ビジネスシーンのイノベーションを支える企業のIT。しかしユーザー企業が必要としているのは、単なる要素技術ではなく課題解決だ。そこで重要な役割を担うのが、システムインテグレーターである。今後、企業のITを担う企業にはどのような姿勢と取組みが求められるのか。パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長 前川一博氏に聞いた。

 

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お客様を起点とした“サービスありき”でビジネスを展開していくことが、IT業界の成長の最重要課題

今、ユーザー企業がイノベーションを起こすためには、ITの戦略的な活用が必要不可欠だと言われています。そのためにはまず、どのような姿勢が必要だとお考えでしょうか。

企業ITの責任者はチーフインフォメーションオフィサー、即ちCIOと呼ばれる人たちですが、このCIOが今ではチーフ“イノベーション”オフィサーだといわれることがあります。CIOはITに加えて、イノベーションの責任まで担う重要なポジションになってきているということで、ユーザー企業の経営層の皆様には、“I”の重要度がこれまで以上に大きくなってきているという認識が必要です。
そして、Iの重要度が高まっている現状を如実に示しているのが、IoTの拡大です。多くの人/モノとサービスを繋ぐところに、インターネットを介したインフォメーションが存在しており、それによって新たなイノベーションが生まれています。例えば、自宅の近所にカーシェアリングサービスがあれば、私たちは車を買わないという選択もできます。利用可能な時間や価格などの情報を調べて、それが納得できるものなら、車という“モノ”を所有するのではなく、カーシェアリングというサービスを利用するという選択をすればいいのです。
しかし昨今のユーザー企業、特に製造業は、I forTになってしまっている場合がある。つまりモノを作るために、インターネット即ちインフォメーションを使おうとするのです。そのため、どうしてもプロダクトアウト型になりがちで、それでは新たなイノベーションは生まれにくい。反面、最近ではIoCという言葉も聞かれます。Cとはカスタマーで、まさに顧客のことです。お客様の視点に立ったITの活用こそが、イノベーションの源泉になるということですね。
いずれにしろ、Iの重要性は明らかで、その活用方法を間違えると企業は生き残れないと言っても過言ではないでしょう。

貴社はITサービス会社として15年以上の実績をお持ちですが、インフォメーションや顧客サービスを重視する姿勢というのは、情報サービスを提供する企業にも求められるものです。

私が2008年4月に当社に入り、まず着手したのが、従業員の考え方を変えてヒューマンスキルをレベルアップさせるための取組みでした。
それというのも、例えば当時の営業部隊には、製品ありきのプロダクトアウト型の営業スタイルが浸透していました。お客様が何について悩み、何を実現したいと思っているのかを深く考えるよりも、こちらの判断基準でご提案してしまう。お客様を起点に考える、という姿勢が希薄だと感じたのです。これはIT業界全般に言えることですが、お客様のことを“アカウント”と呼んだり、システムを“リリース”する、プロジェクトが“カットオーバー”するなど、日常的に用いる言葉ひとつを取ってみてもベンダー側の目線で物事を捉える風潮があり、大きな違和感を覚えました。

そうした違和感の背景には、やはりご自身のキャリアにおける経験があるのでしょうか。

私は現職以前、グループ企業で電設資材の営業に27年半、高齢者向けの介護ビジネスに2年半従事していました。確かに、人間は今自分がいる環境が世間の常識だと思いがちですが、それは大きな間違いで、視点を変えれば見える景色は全く異なってきます。
電設資材の営業時代、私は大阪、神戸、島根、鳥取といったエリアを担当しており、多くの販売店のオーナー社長様とお付き合いさせていただきました。その頃、お客様視点に立っていない言動をつい取ってしまうと、よくお叱りを受けたものでした。仕事のやり方やルールは確かに上司から学びましたが、仕事に取り組む上で何を大切にすべきかということは、すべてお客様から教えていただいたと思っています。
また電設資材の営業はいわゆるB to Bビジネスですが、後に携わった介護ビジネスはB to Cビジネスで、高齢者の方を対象とするものです。そこで働いていたのは、お客様に対するホスピタリティ精神の強い人たちで、そうしたマインドを持って仕事に向き合うべきだという点も強く心に刻まれました。
いずれにしても、すべての起点となるのはお客様です。これは、私たちITサービス会社にとっても何ら変わるものではありません。“お客様が何を望まれているのか”を正確に理解し、それを起点として需要を創造していくことが重要です。このお客様起点の需要創造を、私は“Demand side Logic(デマンドサイド・ロジック)”と呼んでいます。プロダクトアウト型の“Supply side Logic(サプライサイド・ロジック)”ではなく、お客様のニーズを絶えず感じて、お客様が本当に必要としているものを真剣に考えることが、最終的に需要の創造に繋がることになる。このキーワードは、社内へメッセージを送る際にも必ず含めています。

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