ユーザー事例


 日本電気株式会社(NEC)では、2008年から経営システム改革に着手し、グループ会社の経営システムを共通化する「One NEC」を推進してきた。さらに、2015年からはリアルタイム経営基盤の確立に向けたインメモリデータベース「SAP HANA」の導入を進め、2016年11月に完了した。グローバルにわたる大規模でミッションクリティカルなデータベースを支えるOSとして、「Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA(以下RHEL for SAP HANA)」が採用された。プロジェクトの背景やRHEL for SAP HANA採用のメリットについて話を聞いた。(掲載内容は2017年2月時点のものです)

関目 剛久氏

日本電気株式会社
経営システム本部長
関目 剛久

西村 知泰氏

日本電気株式会社
ITプラットフォーム事業部長
西村 知泰

 

背景

競争力向上のため経営基盤をグローバルで統合

 NECでは2008年から経営システム改革に着手している。競争の激しいグローバル市場に対応していくために、事業ごとに業務やシステムを運営してきた状態を改め、「One NEC」としてグローバル観点での業務プロセスに清流化し、維持運営することでシナジー効果を出していくという方針だ。
 ITシステムについても、国内外の連結子会社を含めてSAP ERPで標準化し、グローバル拠点のシステムを統合することにした。また、システムを標準化することで、コントロールポイントの削減に伴う内部統制リスクへの強化やシステム運用費(TCO)削減効果を狙う。
 このように、新しい経営基盤を作るとともに、強い内部統制の仕組みも新たに作ることになり、One NECとしての経営基盤の再構築がなされた。
 2008年から2010年に実施された経営システム改革の「フェーズ1」では、業務プロセス改革と連結経営のスピードアップ、TCO 削減、クラウド基盤化が行われ、グローバル主要拠点のシステムを統合した。

課題

リアルタイムな経営データ把握のためSAP HANAを採用

 2015年からは、経営システム改革の「フェーズ2」を実施した。初期導入設備の保守期限を迎えるタイミングで、「単に設備更新するだけでなく、より経営に貢献できる基盤にしようと考えました」と、NEC 経営システム本部長 関目剛久氏は語る。
 特に、経営層からは、マネジメントサイクルを早く回していくことが重要な武器となるということで、「高速PDCA」というキーワードが重要視されていた。「そのため、システムもできるだけリアルタイム性のある基盤にブラッシュアップしていこうと考えました」と関目氏。
 そこでデータベースとして、インメモリデータベースであるSAP HANAを導入。SAP HANAはインメモリ技術により通常のデータベースより高速なデータ分析やアプリケーション処理が可能になる。また、SAP ERPとも親和性が高い。
 NECグループ各社へのSAP HANA導入は、段階的に実施され、2016年11月で完了した(2016年5月 NEC本社、7月 国内関連会社、11月 海外関係会社)。
 
SAP HANA導入プロジェクト取組みの経緯

システム要件

ハイエンドの高可用サーバーとRHEL for SAP HANAを採用

 SAP HANAはインメモリデータベースのため、性能を発揮するには大量のメモリを要求し、それに対応するためのサーバーマシンが必要だ。「また、ミッションクリティカルなシステムを動かすので、品質上SAPが認定しているマシンを使うのが当然でした」と関目氏。
 そこでNEC本社では、大規模統合基盤向けエンタープライズサーバー NX7700x/A2080H-240を2台サーバーマシンに採用、6TBの大容量メモリを搭載した。本社以外のグループ会社については、2TBメモリを搭載した10台のNX7700xのミドルクラスサーバー NX7700x/A3012M-4のVMware ESXi上で、複数の仮想SAP HANAが動いている。
 また、SAP HANAはLinuxでのみ動く。そこで、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のSAP HANA向けサブスクリプションである「Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA(RHEL for SAP HANA)」を、SAP HANAを動かすOSとして採用した。

RHEL for SAP HANAを選んだ決め手

パートナーとしての実績を自社システムにも応用

 「基幹系のシステムにSAP HANAを導入するため、オープンミッションクリティカルを担保できる構成として、ほぼ必然的にNX7700xとRHEL for SAP HANAを採用しました」と関目氏は語る。
 NECの事業部門はレッドハットのパートナーでもあり、ミッションクリティカル分野でサーバーマシンやLinux、オープンソースソフトウェアをサポートしている。こうした実績が背景となって、社内の経営基盤システムにおいてRHEL for SAP HANAを採用した。
 NEC ITプラットフォーム事業部長 西村知泰氏も、「我々は2000年頃からレッドハットと協業しており、2003年からはRHELを製品としてサーバーと共に販売しています。お客様のミッションクリティカルな領域でRHELを使うために、レッドハットのサポートとともにNECのさらなるサポートをビジネスとして提供し、実績をつけてきました」と語る。
 NECではSAPビジネスにも取り組んでおり、NX7700xやExpress5800などのサーバーでSAP製品を検証しているほか、多数のSAP認定コンサルタントを抱えている。もちろん、これらにおいてもRHELを使っている。「今回のSAP HANAの採用も、NECとレッドハット、SAPの3社の連携が功を奏したと思っています」と西村氏は述べた。

Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA

RHEL for SAP HANAは、インメモリで拡張性が高いデータベース「SAP HANA」をサポートするよう最適化されたRed Hat Enterprise Linuxのバリアント製品です。要求の厳しいデータソリューションに対応可能な、信頼性と拡張性に優れたオープンソース基盤を提供します。

RHEL for SAP HANAを導入したメリット1

分析が高速化すると共に業務プロセスも高速に

 今回のプロジェクトでデータベースをSAP HANAに変更した結果、処理は極めて高速になった。「我々が決算期間中に経験するような、時間のかかる業務の処理時間が格段に短くなりました」と、そのメリットを関目氏は話す。
 また、1日に何度もオンライン処理を繰り返すような業務においても、スループットが1.2〜3倍になり、処理回数を増やせるようになった。
 こうした処理の高速化は、単に性能向上というだけではなく、経営への貢献として「高速なPDCA」を支えることになる。「これまでは、ひと通りプロセスを回した上で検証していたことも、リアルタイムの最新データで持って、早い段階で経営に生かせる点が重要だと考えています」と関目氏。「システムの性能向上によって業務プロセスのスループットが向上し、リアルタイム性が増せば経営判断のタイミングも早くなる。これが大きな成果です」。
 関目氏は、「現在はまだ途中の段階」としつつ、今後はITにおいてはERPを、経営においては業務プロセスを強化して、より効率化を図っていくと言う。

RHEL for SAP HANAを導入したメリット2

サーバーからERPまで高い信頼性を実現

 今回の対象システムは、グループ全体に関わるミッションクリティカルな経営基盤システムであるため、高いレベルの信頼性が求められる。
 この点についても関目氏は「構築時のトラブルはまったくなく、運用に入ってからもトラブルはゼロ、性能面でも実に安定しています。サーバーマシンからERPまで、すべて含めたシステムとしての安定性をしっかり確保できています。この構成を選択してよかったと思います」と語った。これも、各製品の高い信頼性によるのはもちろん、SAP HANAとRHEL for SAP HANA、NX7700xの組み合せが製品として検証されていることの効果だろう。

RHEL for SAP HANAを導入したメリット3

自社の実績をベースにソリューションを展開

 NECは、RHELやSAPのユーザーであると同時にパートナーでもあるので、今回のSAP HANA導入の実績をもとに、そこで得たノウハウに基づいたSAP HANAソリューションを販売していく計画だ。
 西村氏は、「今回のようなミッションクリティカルな用途における実績は、プロモーションとしても有効です」と、自社での実績の意義を説明する。「サーバーとOSだけではなく、システム全体についてミッションクリティカルなお客様に対応できるというメッセージになれば嬉しい」(同氏)。
 関目氏も、「SAP HANAは比較的新しい製品で、導入を懸念する声も聞かれました。しかし、これだけ大規模で安定稼働している事例があれば、お客様の見る目も変わってくるのではないか」と期待を寄せた。

今後の展望/レッドハットへの期待

OS以外の領域へグローバルレベルの協業を

 経営システム改革は次のフェーズに入り、SAP ERPとしてS/4HANAを導入するなどの計画を進めている。「昨年11月にようやく大規模な工事が終わり、いまは次年度の予算を含めて計画を立案している最中です」と関目氏。「S/4HANAをはじめ、SAPのソリューションがHANAを中心としたものにシフトしつつあります。リアルタイム性を高めるものは積極的に取り込んでいき、高速PDCAをより強化していきたいと考えています」。
 その中で、何よりも品質や安定性が重要だと関目氏は繰り返す。「これからもレッドハットと事業部門との協業で最適な選択肢を提供し、最適なものを社内システムとして選んでいきたい」。
 今回のプロジェクトを経て西村氏は、OS以外の領域にもレッドハットとの協業を広げていきたいと語る。「OpenStackやOpenShiftなどのクラウド領域や、IoTへの活用などに、グローバルレベルでレッドハットと取り組んでいきたいですね。NECのデータセンターでのサービスや、オンプレミスへの製品提供などにおいて、製品の技術面と、私たちのハードウェアやサポートと組み合わせたシステムソリューションを提供していきたいと思っています」。


関連リンク

日本電気株式会社
Red Hat Enterprise Linux
Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA(英語)
Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA データシート(英語)