ユーザー事例


 国内および海外旅行のパッケージツアーブランド「ANAスカイホリデー」や「ANAハローツアー」を展開するANAセールス。旅行商品の企画販売を行う同社では、年間4万4,000コースもの国内旅行パッケージツアーを販売している。その旅行商品の価格作成業務は煩雑かつ膨大で、チームや担当者ごとに属人化した手作業に頼らざるを得ない状況が続いていた。これらの課題を解決するため、同社ではビジネスルールエンジンの導入を決定。Red Hat JBoss BRMSを採用し、業務の効率化と標準化を実現した。
 
ANAイメージ

丸山 一雄 氏

ANAセールス株式会社
経営企画部 旅行システム開発室 室長
丸山 一雄

上地 玄悠 氏

ANAセールス株式会社
経営企画部 旅行システム開発室
アシスタントマネジャー
上地 玄悠

背景

旅行商品の価格作成業務において
時間のかかる非効率な作業が定常化

 ANAセールスでは現在、航空券販売を行う航空セールス事業と、自社で旅行商品を企画販売する旅行事業とを展開している。今回ビジネスルールエンジンを適用したのは、旅行事業における国内パッケージツアーの旅行代金を作成するシステムだ。その背景について、ANAセールス株式会社 経営企画部 旅行システム開発室 室長の丸山一雄氏は次のように説明する。
 「国内ツアーとしては、北海道から沖縄まで年間約4万4,000コースの商品を販売しています。これまで、各コースの旅行代金の作成は、企画担当者が複数のExcelシートを組み合わせるなどして手作業で行っていました。旅行代金は、目的地や季節、さらには曜日や時間帯などさまざまな要素で変動するため、価格作成が非常に複雑です。また作業量も膨大なため、入力ミスなども発生します。こうした状況を改善したいと思いつつも、システム化は難しいと考えていたので、長年にわたり具体的な改善案が出せずにいました」(丸山氏)。

課題

膨大な作業時間や人為的なミスを削減し、
業務プロセスを標準化、平準化したい

 昨今の旅行業界では、市場のトレンドや多様な顧客ニーズに応えるべく、商品サイクルが短期化しつつある。同社においても、かつては旅行商品の企画立案はほぼ半年単位だったが、2カ月単位で商品サイクルを回すなどの対応が求められていた。迅速な商品展開が重要視されつつも、従来の旅行代金の作成方法がボトルネックとなっていた。
 「旅行代金の算出だけで約2~3週間もの時間を要する従来の方法では限界だと感じていました。売りとなる人気企画の立案にはじっくり時間を充てたい、しかし商品展開の間隔は短縮する必要がある。そのためには作業を効率化し、同時に人為的なミスをなくす必要もあったのです」(丸山氏)。
 旅行代金の計算フォーマットは、標準的な計算式でマクロを組んだExcelシートだったが、旅行代金の作成に際しては目的地ごとに地域特性を勘案する必要がある。そのため、企画担当者は自分の経験値に基いて独自に作業のカスタマイズを行っており、一人で約10種類もの計算式を操っている担当者もいた。まさに職人技だ。
 「企画担当者が利用するExcelシートは個別でカスタマイズされており、完全に属人化していました。それが、作業の標準化や人員の横展開などを困難にしていたのです。業務の効率化と共に、業務プロセスを標準化、平準化する必要も痛感していました」(丸山氏)。

システム要件

煩雑な業務を効率化して工数を削減、
仕様の変更も迅速に

 長期にわたり、旅行代金の作成業務を課題と認識していた同社は、解決策を模索する中でビジネスルールエンジンの存在にたどり着いた。その経緯について、ANAセールス株式会社 経営企画部 旅行システム開発室 アシスタントマネジャーの上地玄悠氏は、次のように説明する。
 「我々の課題をシステム的に解決するためには、独自の仕組みをスクラッチで開発するしか方法がないと考えていました。しかし、導入コストの観点から採用を見送らざるを得ませんでした。そんな折、以前からANAグループと接点のあったレッドハットに相談したところ、Red Hat JBoss BRMS(以下JBoss BRMS)を紹介してもらったのです」(上地氏)。
 ビジネスルールの有用性に着目した同氏は、ソリューションとしてJBoss BRMSに焦点を絞った。その理由としてまず挙げられるのは、ビジネスルールを業務アプリケーションから切り離して管理、実行できる点だ。
 「これによって、開発フェーズではビジネスルールと業務アプリケーションを別々に構築することが可能となり、開発作業の効率化と開発工数の削減を実現できます。運用フェーズにおいても、通常はビジネスルールが変わるたびに業務アプリケーションを修正する必要があり、追加のコストと工数が発生しますが、JBoss BRMSならビジネスルールだけを修正すればよく、システム全体に手を加える必要はありません。環境の変化にも迅速かつ低コストで対応できるという点も、JBoss BRMSを採用する決め手となりました」(上地氏)。
 結果的に、導入コストもスクラッチ開発と比較して約3分の1に抑えることができた。
 

旅行代金価格作成システムの自動効率化
 

JBoss BRMSを導入したメリット1

作業工数は20〜40%削減、
削減できた時間は企画立案に充当

 これまで旅行代金の作成にあたっては、原価となる航空券やホテル代、レンタカー代などを企画担当者がExcelに入力し、そこにさまざまな計算ロジックを適用することで算出していた。国内線は1日に約1,000便も運航しており、同じ東京〜沖縄間でも、時間帯などによって往路、復路の価格が変わってくる。また北海道、沖縄といった地域ごとのパンフレットに記載する旅行設定期間は長いもので200日以上あり、パンフレットの誌面幅の都合上、旅行代金を18種類以内に分類して割り振っていく必要があった。かつてはこの旅行代金の作成と分類作業を、企画担当者がすべて手作業で行っていたという。
 「JBoss BRMSを導入したことで、この作業を1クリックでできるようになり、作業工数を大幅に削減することができました。最大で40%、少なくとも20%は削減できており、作業時間の短縮に繋がったことで、従業員のワークライフバランス実現の一助にもなったと考えています」(丸山氏)。
 またこの効率化によって捻出できた時間は、企画担当者が本来注力すべき企画立案に充てられるようになった。
 「これまで企画担当者は、業務時間の約4割を旅行代金の作成に占めていました。しかしそれは、最も時間を圧縮すべき業務だったといえます。その部分を削減できたことで、旅行商品の企画や分析、あるいは市場調査など、本来時間をかけるべき業務に注力できるようになりつつあります」(丸山氏)。

JBoss BRMSを導入したメリット2

シミュレーションのやり直しも容易になり、
より競争力の高い価格設定が可能に

 旅行代金の作成業務では、最終的な価格を確定するまでに1つのコースで通常2〜3回、シミュレーションを繰り返すこともある。競合他社との価格比較などを踏まえての作業だが、このような価格見直しの際には、単に当該コースの価格を調整すればよいというわけではなく、同時期の同一エリアの旅行全体で収益が担保できるかという点も算出し直さなければならない。しかし、年間4万4,000コースもある国内ツアーすべてに2〜3回のシミュレーションを手作業で行う工数は膨大だ。そのため、これまではすべてのツアーで完璧な収支シミュレーションを実施することは困難だった。
 「それが今では、JBoss BRMSにより迅速に算出できます。1コースあたり2〜3回というシミュレーションの回数自体は変わっていませんが、適正でより競争力の高い旅行代金を、より多くのコースで設定できるようになりました。JBoss BRMSは、我々の競争優位性と同時に収益もきちんと確保してくれる有用な仕組みだと言えます」(上地氏)。

JBoss BRMSを導入したメリット3

作業時間の平準化を実現、プロセスの
標準化でスキルトランスファーも容易に

 今回の導入では、目的地の特性等によりこれまで企画担当者間でばらつきのあった作業時間そのものをほぼ同じレベルに平準化することにも成功した。
 また、作業プロセスが標準化されたことで、これまでは横展開が不可能だったチーム間での連携も可能となり、たとえば繁忙期に効率的に人員を配備したり、業務のスキルトランスファーを実施したりといったことも円滑に行えるようになった。
 「さらにはExcelフォーマットをシンプルに標準化したことで、入力間違いなどの人為的なミスも低減し、より精度の高い商品価格の作成にも繋がっています」(上地氏)。

導入に際してのチャレンジ

属人化した作業の洗い出しが鍵、
担当者へ個別ヒアリングを実施

 一方、ビジネスルールエンジンを導入するためには、これまで各企画担当者の中でブラックボックス化していた料金計算のコツやノウハウをすべて洗い出す必要があった。同社では約3カ月をかけて、この作業を行ったという。
 「北海道から沖縄に至るまで、すべての国内旅行の企画担当者に対して、旅行代金をどのように作成しているのかを細かくヒアリングしました。これまでは、業務の棚卸しをしようとしても皆忙しく時間が取れなかったのですが、価格作成業務に長年課題を感じていた経営層の後押しもあり、JBoss BRMSの導入を全社プロジェクトとして推し進めたことで、企画担当者のノウハウを可視化することができました。経営層のコミットメントも重要な要件だと考えています」(丸山氏)。
 ANAセールスでは企画担当者へのヒアリング期間を含め、計約11カ月間でJBoss BRMSの導入を含む旅行料金作成アプリケーションの構築を完了させた。

今後の展望レッドハットへの期待

追加料金の計算にもBRMSの適用を検討、
さらなる“攻めのシステム”を

 今回のJBoss BRMS導入にあたり、上地氏は企画担当者のノウハウをシステムに落としていく際にレッドハットの知見が役に立ったと振り返る。
 「我々は、旅行商品の価格作成業務については熟知していますが、それをどのようにシステムに落とせばよいのかという点については正直そこまで詳しくありません。レッドハットからは、ビジネスルールエンジンと業務アプリケーションを切り分けて各々に進化させていけるということを教わりながら、だったらここはこういうルールにしようとか、ここはシステム側で吸収しようとか、判断を下す必要がある場面でサポートしてもらい、とても参考になりました」(上地氏)。
 比較的容易にビジネスルールを追加できることから、今回システム化の対象に含まれなかった旅行商品の追加代金において、まだ洗い出しができていない改善点を抽出し、さらに効率化していくことを考えている。
 「今回のJBoss BRMS導入は、いわば“守りのシステム”への適用です。しかし我々がさらにビジネスを拡大していくためには、お客様のカスタマーエクスペリエンス全体にわたって関係を強化できる“攻めのシステム”が必要です。そうした領域でも、JBoss BRMSや新しいテクノロジーを使って成長できるのではと見込んでいます。レッドハットには、そうしたところも含めて引き続き支援してほしいと思っています」さらなる成長への抱負を語りつつ、丸山氏は締め括った。


関連リンク

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