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デジタル変革が求められる時代

デジタル変革(英語でDigital Transformation)という言葉は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授により提唱されたもので、

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」(wikipediaより引用)という概念です。

その頃からわずか10数年も経たずして、すでにさまざまなビジネスの変革が起こり、私たちの生活はますます便利になりました。

新興企業が最低限のコストで事業を興し、既存のビジネスを脅かすほどのイノベーションで業界を席巻している昨今において、既存企業は今まで以上にデジタル化によって企業組織に変革をもたらし、競争力を高める必要性に迫られています。

 

創業から140年の重工業企業であるGEが、デジタル変革によりソフトウェア企業になると標榜し、自社のIoT収集・分析ノウハウを活用してPredixというサービスを開始したのは記憶に新しいと思いますが、そのサービスが2016年には既に5,000億円を超える売上となり、同社が製造業を中心としたインダストリー4.0を実現する大手ソフトウェア企業になっていることはご存知でしょうか?

ITをいかに戦略的にビジネスに活用していくか?は、ビジネスの不確実性が大きくなった現在、すべての企業が検討すべき喫緊の課題であるといっても過言ではありません。

 

昔と今の違い

昔といってもほんの20年前ですが、当時と今を比べて一体何が変わったのでしょうか?

20年前というと、Yahoo! が株式を公開した頃で、ちょうどインターネットの個人利用が活発になり始めた時期です。下記に象徴的な事例をあげると、

・1995年の日本の携帯電話普及率は人口の10%弱だが、2013年には100%を超えた

(参考:http://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/tool/tokeisiryo/idoutai_nenbetu.html

・インターネット上のトラフィック(ダウンロード)は、2006年と比べると10倍以上の伸びとなっている

(参考:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc252220.html

このように、モバイルデバイスの普及とネットワークの進化により、あらゆる人々が必要な情報に対して、ごく簡単に、しかも場所を意識せずアクセスできる環境が整いました。その結果、新しいサービスがさまざまなデバイスを通じて人々に受け入れられるスピードが加速度的に速くなっていると言えます。

 

これらの技術的変化を受け、いまビジネス領域にも大きな影響が及んでいます。

例えば、Facebookに買収されたモバイル向けインスタントメッセンジャーアプリWhatsAppのような新規企業が、クラウドを活用して安価にプラットフォームを構築し、2016年にはユーザーが10億人を超えたように、さまざまな新興企業が既存企業のシェアをあっという間に奪ってしまうということが現実に起きています。

また、LinkedInのようなソーシャルネットワーキングの企業は、アプリケーションの利用者から利益を得るのではなく、利用者の行動履歴を蓄積し、ビッグデータを分析して、リクルーターに向けて有料人材紹介サービスを提供することで利益を獲得しています。このように、”データをいかに蓄積し活用するか”が、サービスの差別化競争にますます拍車をかけているのです。

さらに米国の薬局チェーンWalgreensのように、既存ビジネスにおいても業界大手だった企業が、自社のコアビジネスをデジタル化し、マルチチャネルを実現することで利益を拡大したり、新規サービスを開発したりしています。このように、デジタル変革が企業のビジネス戦略の中心に置かれることがごく当たり前の時代になってきているのです。

 

デジタル変革に求められる視点

デジタル変革に取り組むにあたって求められる視点として、「スピード」「顧客中心」「エコシステム」の3点が重要です。

(1) スピード重視

まず、世の中にサービスを提供するスピードが非常に重要になってきます。

他社にないサービスをスピーディーに提供するには、自社で開発するか、外部サービスをうまく取り込むかを迅速に意思決定する必要があります。

これにはさまざまなパターンがあります。クラウドサービスによって、IT基盤を作らずに利用するというインフラ観点から、会計機能や人事機能をサービスとして利用するというアプリケーションの観点まで、検討する領域は幅広く存在します。また、戦略的に会社を買収して足りない機能を取り込むことも含まれます。

さらに、提供したサービスは、より良いサービスへと継続的に改善していく仕組みがないと、頻繁に変わるビジネス環境の変化に追随できなくなります。

(2) 顧客中心

次に、顧客中心の価値提案を追求していくことも重要になります。

大量の情報がほぼ無料で検索できる現代では、サービスを選ぶ顧客の目利き力が企業のそれを上回る、ということが起こります。またソーシャルネットワークが発達することで、口コミによるサービスの評価など顧客はさまざまな情報を入手でき、評判が悪ければ簡単に他社に乗り換えてしまいます。従って、ここで重要になってくるのが、顧客の行動を先読みし、素早くトレンドを取り込み、感性に訴える価値をいかに迅速に提供できるかという点です。

(3) エコシステム重視

さらに、自前主義で全てのバリューチェーンを完結するのではなく、他社との繋がりにより価値の相乗効果を狙う戦略、すなわちエコシステムの形成も重要になります。

先ほど紹介したWalgreensは、写真印刷事業を店舗での扱いのみに限定していましたが、スマートフォンの写真アプリから写真印刷を注文できるようにしたところ、大きく売上を伸ばしました。さらに、アプリ経由で注文された売上の一部をアプリ開発会社が受け取る仕組みにした結果、今や200を超えるアプリケーションが繋がる活発なエコシステムが形成されています。

 

デジタル変革のロードマップ

それでは、企業はデジタル変革をどのように進めるべきなのでしょうか?

冒頭で紹介したデジタル変革の定義「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」を言い換えてみると、

「人々の生活の“あらゆる場面”に”デジタルサービス”が浸透することで、“顧客体験”を通じたより良い価値を提供する」と言えます。

そのためには、さまざまなデジタルサービスが有機的に連携し、かつ個人の嗜好にあった最適なサービスを提供する必要が生じてきます。

これは、オムニチャネルの考え方にも近いといえます。

 

そこで私たちは、以下の3段階のアプローチをご提案します。

第1段階:コアビジネスの強化に最優先で取り組む

オムニチャネル化を実現するためには、自社のコアビジネスをさまざまなチャネルに対応する変化に強いものにしていかなければならず、そのためには、画面(フロント系アプリケーション)とビジネスロジック(バックエンド系アプリケーション)を分離して、ビジネスロジックに汎用的なインタフェースであるAPIを作ることが有効な手段になります。

このような改善活動を継続的に行なっていくと、顧客の(質の良い)行動履歴が大量に蓄積されていきます。これを分析し、自社にしかないノウハウを組み合わせたサービスを提供することで、新たなビジネスを生むチャンスが出てきます。

 

第2段階:内部で強化されたAPIを外部のサービスに利用

第1段階で整備されたコア機能によって、外部パートナーや顧客が利用できる「オープンAPI戦略」を実現できるようになります。

このような取り組みが活発になりつつあるのが、金融業界です。銀行APIの公開により、さまざまな金融サービス会社と銀行が繋がることで、新たな決済サービスや資産運用サービスが増え、顧客の利便性が上がることが期待されます。

 

第3段階:エコシステムを醸成する

次の段階として、 API連携をコーディネートする企業がハブとなり、接続された複数のパートナーや顧客によるエコシステムができていきます。

この段階では、APIを利用する開発者に対するマーケティングが極めて重要となります。APIを利用するためのSDKの提供や、ハッカソンなどによるオープンイノベーションの促進活動など、開発者に魅力的なAPI公開を継続していくことが必要となってきます。

 

このようなロードマップを遂行するためには、自社のIT戦略に、APIによる俊敏なインテグレーションをどのように組み込むかが重要な鍵となるでしょう。

ここでは、この考え方を「アジャイル・インテグレーション」と呼びたいと思います。

(後編に続く)

レッドハット・エバンジェリスト・プロフィール

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