オープンソースのおと


Ansible 徹底入門
パブリッククラウドの導入が進み、仮想化されたシステムが増えたことで、サーバーの導入コストに対し、より効率化が意識される傾向にある。従来は手順書をベースにした手作業もしくはスクリプトを用いる傾向があったが、システムの台数や規模が煩雑になるにつれ、現在の主流は Infrastructure as Code と呼ばれる構成管理ツールを導入する手法へと遷移している。Ansibleは、こうしたサーバーの構築を自動化してくれる実に便利なツールだ。

2017年2月、このAnsibleを徹底詳解した入門書「Ansible徹底入門」(翔泳社)が発刊された。同書では、Ansibleの基本的な説明にとどまらず、より実践的な環境を想定し、AWSやAzureなどのPublic Cloud、IaaS基盤であるOpenStackで利用する方法を紹介している。またDockerコンテナといった、システム構築の新しい枠組みで活用する方法も解説している。現場で役立つ情報を網羅した、クラウド時代を生きるインフラエンジニア必携の一冊と言える。

今回、同書の発刊を記念して、座談会の形式で執筆陣と編集担当にインタビューをおこなった。企画の背景、各執筆者のAnsibleとの出会い、執筆中のエピソード、またAnsibleの魅力や今後期待する点など、執筆者それぞれの思いとその飾らない声をお届けする。

—— 今日は、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。待望のAnsible本の発刊ということで、本日はよろしくお願いします。
ではまず、主執筆者である廣川さんからお聞かせいただけますか。

廣川:はい、今日はよろしくお願いします。私は、学生時代に今の会社でアルバイトを始めて、そこで初めてプログラミングに触れ、今日に至っています。当初からPaaSの開発・運用に関わっており、そこでAnsibleに出合いました。
執筆を担当したのは1〜5章の「基本編」です。Ansibleが必要とされた背景から具体的な使い方まで、チュートリアルを含めご紹介しています。読者の皆様に書籍として長く読み続けていただきたいので、最新情報を取り入れることと実践的なトピックを取り入れること、そのバランス取りを工夫しました。執筆は休日が中心だったので、集中して作業できる場所を見つけて、とにかくそこに出向いて執筆モードに入っていましたね(笑)。

 

ansible-book-0213

平:では続けて。レッドハットの平です。現在、レッドハット株式会社にてパートナーソリューションアーキテクトとして活躍しています。
Ansibleとの出会いは、Red HatがAnsible買収を行った2015年からです。当時、製品説明依頼が多けれど製品情報がまったくありませんでした。Ansible社のサイトでビデオやドキュメントを元に自己学習して説明スライドを新しく作ったのがきっかけです。今回は6章、OpenStackを担当しました。
書籍は今回ちょうど10冊目で、執筆自体には慣れているのですが、現在、家に1歳の息子がおり時間の捻出が大変でした。私は執筆にEvernoteを使って、時間のある時に書き溜めてはまとめるを繰り返して進めています。あと、音楽を聴きながら書くことが多いですね。Google Play ミュージックで聴き放題プランなのですが、なぜか同じ曲を聴くことが多いです。

—— それはもったいないですね。では続けて、森田さんと渡邊さんにお聞きしましょう。森田さんは、福岡から電話で参加いただいています。

森田:はい。私は元々、大手メーカーにて組込みシステムの開発キャリアをスタートし、地元九州に戻るために転職したのを機に、インフラエンジニアに転向しました。そこでAWSに出会いました。現在は株式会社オルターブースで働いています。
今回、執筆は初めてで、福岡からのリモートでの参加という点もあり、いろいろと大変でした。担当したのは7章のAWSです。Ansibleで仮想マシンを作成し、AnsibleとCloudFormationを組み合わせた構築方法、最後にAnsibleでデプロイする方法を紹介しています。休日は自宅にいるとだらけてしまい、外に出て執筆していました。

渡辺:私は、電力系統制御システムの開発にはじまり、マルチメディア系のアプリ開発、フリーランスを経て2013年7月に現在の会社である合同会社 decr を設立しました。今はWeb系システム開発、インフラ構築・運用、iOSアプリの開発も手がけています。
私の担当は8章のAzureです。Azureモジュールは昨年5月に公開されたAnsible2.1で追加されたばかりで、情報や知見が少なく、1つ1つ検証しながらの執筆が大変でした。執筆はもっぱら、本業に影響しない早朝4〜7時に集中して書いていました。

一同:それはすごい!

橋本:最後になりましたが、レッドハットの橋本です。現在、レッドハットでコンサルタント業務に携わっています。9章のDocker、10章のPlaybookのテストの執筆を担当しました。
9章のDocker コンテナの利用では、Ansible Container を用いて Docker イメージのビルドやコンテナをデプロイする手法について解説しています。
10章のPlaybook のテストでは、Ansible Playbook をテストする方法について、どの様な方法と課題があるか、また外部サービスなどを利用したテストの手法を紹介しています。
執筆で困ったのは、用語の表記方法ですね。日本語だと英語とは違う印象になるものもあり、その辺は工夫して進めました。特に廣川さんを中心に議論し、執筆の最初の段階で用語の表記を合意しました。執筆中は、Ansible Blogを読んだり、AnsibleFestの動画を見てモチベーションを上げていました(笑)。

ansible book image

—— 皆さん、ありがとうございます。
本書は、企画が持ち上がったのが昨年6月頃で、10カ月足らずで発刊にこぎつけるというスピードでした。複数の執筆者で進めるだけでも調整など大変だと思うのですが、そのあたり、翔泳社の編集担当、石川さんにお聞きしたいと思います。企画に至った経緯なども教えていただけますか。


石川:
まず、Ansibleという製品自体にとても勢いがあり、「これは来る」と直感しました。「エージェントレス」という点に魅力を感じ、今回の企画を決めました。
作業が順調に進んだのは皆さんの人脈によるところも大きいのですが、何より製品が魅力的なので、「早く執筆して世に送り出したい」という思いを全員が強く持っていたことが大きいのではないでしょうか。

—— なるほど、皆さんのAnsibleへの熱い思いが結束したということですね。
では皆さんから一言ずつ、今後Ansibleに期待することがあればお聞かせください

廣川:すばり、Ansible TowerのOSS化と、Red HatによるAnsible Coreに対するサポートの提供です。サポートについては、より安心感をもって使いたいという面もありますが、それ以上に安定している部分とアクティブに開発が進んでいる部分の切り分けが明確化されるといいですね。

森田:継続的なバグ対応でしょうか。あと、shellやcommandに頼らなくてもいいように、今後も新しいモジュールやアップデートが出てきてほしいです。Ansibleのモジュールに慣れてしまい、最近はLinuxコマンドを忘れがちです(笑)。Red Hatの買収以来、Ansibleに良い勢いを感じてます。

渡辺:私も、Azureモジュールの種類をもっと増やしてほしいです。あとはやはり、既存のバグ修正ですかね。現状かなりアクティブだと思うので、このまま進むといいなと思っています。

橋本:私は個人的に、Ansible Coreがいつ正式に単体製品としてサポートされるのか Ansible の1人のユーザーとして、とても気になっています。

平:現在の課題としては、モジュールごとの品質均一化ですね。新しいモジュールは、ドキュメント通りに動かないものも存在します。とはいえ、モジュール数が多く、開発に勢いがあるので、今後もAnsibleに期待ですよ!

—— ありがとうございます。最後に、編集の石川さんから本書のオススメポイントがあればお願いします。

石川:はい。本書は、Ansibleや他の構成管理ツールを使ったことがなくても、また特別な環境がなくても読み進められるよう、導入の部分から丁寧に書かれています。後半は具体的にOpenStack、AWS、Azure,Dockerコンテナとの連携、Playbookのテストなどを掲載しており、実践面もしっかりカバーした内容です。すでにAnsibleを使用している方にも新たな気づきも多いと思いますので、ぜひ読んでいただきたいです。

—— 皆さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。

 


著者紹介

廣川 英寿(ひろかわ ひでとし)
(株)リアルグローブ主幹技士
2011年よりコンテナ型マルチテナントPaaSの開発/運用に従事。2013年頃、PaaS上の環境を外部にコピーするための効果的な方法を模索している過程でAnsibleに出会い、現在はPythonベースのアプリケーション開発業務を主軸に、Ansibleを中心としたDevOps/Infrastructure as Codeの推進活動も行なっている。

平 初(たいら はじめ)
レッドハッド株式会社 ソリューションアーキテクト
商社系SIer、外資系ハードウェアベンダーを経て、現在、レッドハット株式会社にてパートナーソリューションアーキテクトとして活躍。仮想化技術の黎明期から、IAサーバーにおける仮想化技術の啓蒙活動に力を注ぎ、日本国内における仮想化技術の普及拡大に貢献した。仮想化技術Linux KVM、OpenStack、Glusterの普及、啓蒙活動に従事し、最近ではパートナーイネーブルメントを担当。翔泳社のKVM徹底入門を執筆した事がきっかけで妻と出会い、今では2児の父。

橋本 直哉(はしもと なおや)
レッドハット株式会社 コンサルタント
国内MSPやDC事業者でインフラエンジニアやクラウドエンジニアを経て、レッドハット株式会社ではコンサルタントとして所属。Ansibleとの出会いはシェルスクリプトをPlaybookに置き換えようと2015年に思い至ったところから。ライフワークは国内外を問わず、マラソンとクラフトビールを巡ること。

森田 邦裕(もりた くにひろ)
株式会社オルターブース ソリューションアーキテクト
大手メーカーにてネットワーク系エンベデッドシステムのエンジニアとしてキャリアをスタートし、地元九州への転職を機にインフラエンジニアにキャリアチェンジ。クラウド技術をより追求/発信できる場を求めて2016年に株式会社オルターブース入社。現在はクラウドインフラの構築/運用やDevOpsに取り組む。AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル。プライベートでは夫婦共通の趣味である神社巡りを楽しんでいる。

渡辺 一宏(わたなべ かずひろ)
合同会社decr(デクル) 代表社員
電力系統制御システムや、CD-ROM等マルチメディア系Windows/Mac OSアプリの開発を経て、2000年8月に株式会社イーツー設立に参画。その後、2013年7月に合同会社decrを設立。Web系のシステム開発やクラウドインフラの構築/運用、iOSアプリの開発などを手がけている。主な著書に『CakePHPで学ぶ継続的インテグレーション』(共著、インプレス刊)『CakePHP2実践入門』(共著、技術評論社刊)『クラウドセキュリティ クラウド活用のためのリスクマネージメント入門』(共著、翔泳社刊)などがある。
Twitter: @kaz_29
Blog: http://kaz29.hatenablog.com/

 

 

Ansible 徹底入門Ansible徹底入門
〜クラウド時代の新しい構成管理の実現〜

発売日:2017年2月16日
ISBN:9784798149943
価格:本体3,480円+税
仕様:B5変・336ページ

ご購入はこちらから

SE Book[翔泳社の本]
http://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798149943