オープンソースのおと


ビジネスとITとの距離が急速に縮まりつつある昨今、ITの成果がビジネスの成長に直結するといっても過言ではありません。そんな中、世の中の変化のスピードに追いつき、追い越していくために自らの手でITを変えていこうという経営者が出てきています。

本コラムでは、「ビジネスパーソンとOSS」と題して、さまざまなチャレンジを続けているビジネスパーソンに焦点をあて、新たなITとビジネスイノベーションのありかたをご紹介していきたいと思います。

今回は、弁護士という立場から、ITによる法務関連業務の変革に挑戦されている株式会社リグシーのCEO/弁護士、笹原健太さんです。

 

皆さんは、Legal Tech(リーガルテック)という言葉をご存知でしょうか?察しの良い方はお気づきだと思いますが、FinTechのようにリーガル(法律) と テクノロジーを融合した造語であり、法務分野におけるITイノベーションを指します。

数年前から海外ではトレンドの一つとして語られてきていますが、日本国内ではまだマイナーな存在といえるでしょう。

そんな中、2017年8月に株式会社リグシーが開始した「Holmes」は、今注目のLegal Techサービスとして関心を集めています。

Holmesは、クラウド上でさまざまな契約書を作成・締結・管理できるOSSベースのSaaSです。これまで弁護士や行政書士等の専門家に依頼して作成してもらっていた法的な契約書を、誰もが簡単に作成でき、かつ安全に管理することができます。そして驚くべきは、このサービスはなんと現役の弁護士が立ち上げたという点です。

今回は、このサービスを立ち上げた弁護士であり株式会社リグシーのCEO、笹原健太さんにお話を伺いました。

 

株式会社リグシーCEO笹原氏

株式会社リグシー CEO 笹原氏。赤坂溜池山王法律事務所の所長も兼任

 

まずはじめに、Holmesを立ち上げられた経緯をお聞かせください。

2014年1月、「世の中から紛争裁判をなくす」という志のもと、弁護士法人PRESIDENT赤坂溜池山王法律事務所を設立しました。
ただ、「世の中から紛争裁判をなくす」ためには、弁護士としての活動だけでは足りないと感じて、より具体的なかたちにするためリグシーを設立しました。
というのも、さまざまな紛争の中には「契約書が作成されていれば防げたのに」というケースが数多くあるためです。

弁護士に頼むと高額な費用がかかり、手間もかかる…。そんな理由で、契約書を作成していない個人事業主の方や中小企業の方が大勢いらっしゃいます。
これらの壁を取り除くことができないかと考えていたところ、米国在住の友人がLegal Techについて教えてくれたのです。正直、法務分野は他の業界よりもIT化が遅れているという実情があります。まだ日本国内でもLegal Tech分野におけるサービスは数少なく、あっても一般の方が簡単に利用できるというものではありませんでした。そこで、誰もやっていないなら自分がやってみようかなと思い立ったわけです(笑)。

 

素晴らしいですね。笹原さんは、ITの知識もお持ちだったのですか?

いいえ。正直、ITの技術についてはまだまだ勉強中で、細かいことはわかりません(笑)。ただ、周りにいた詳しい人や信頼できる人に相談し、彼らの力を借りてどうにかサービスを立ち上げるに至りました。本当にゼロから始めたので、ある程度の形にするまで1年くらいかかってしまいましたが…。

— ゼロから始めて、たった1年でですか!すごいスピード感ですね。ところで今回、なぜ OSS を利用しようと思われたのですか?

はい。自分が思い描いているサービスを最短で実現するために、OSSを組み合わせて利用するのが最適だと感じたのです。特にOSSに詳しかったわけでも、思い入れがあったわけでもありません(笑)。

 

Holmesの画面スナップショット

Holmesの画面。ブラウザ上で各種法務文書の作成可能

 

— OSSを利用するにあたって、懸念や不安はありませんでしたか?

自社のエンジニアを信用しているので、特に不安はありませんでした。ただ、法務文書を扱うサービスである以上、セキュリティに関しては細心の注意を払いました。それもあって、OSSでもサポートを受けられるレッドハットの製品をできる限り利用するようにしたのです。

 

またサービスを開始して間もないですが、今後の展望などあればぜひお聞かせください。

今はまず、安定したサービスの提供を目指しています。現段階では詳細はお伝えできませんが、やりたいことはまだまだたくさんあるんですよ。技術的には、実はAI分野に興味をもっていて、既に研究や開発を開始しています。

AI関連技術として、プログラミングを行わなくても新しい法務ルールを追加できるようBRMSの利用も検討中です。そうすれば、ユーザーの皆さんにより満足していただけるサービスに近づけられると思っています。

また、ユーザーの方の要望に合わせてブロックチェーン等を導入することで、よりニーズに合った、かつセキュアなサービスも提供できるようになるのではないかと考えています。

とにかく実現したいアイデアが山ほどあるので、まずは技術に明るく私たちのビジョンに賛同してくれる技術者を社員として迎え入れたいですね。そして、より充実したサービスを、より多くの方々に提供していきたいと思っています。

 

株式会社リグシー:https://www.legsea.co.jp/aboutus.html

契約書作成・電子契約締結「Holmes(ホームズ)」:https://www.legsea.co.jp/

 

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今回のインタビューは、赤坂にある笹原氏が所長兼務する弁護士法人プレジデント赤坂溜池山王法律事務所で行われました。法律事務所とは思えないほどオープンで、活気ある雰囲気でした。この環境が、Holmesのような斬新で新しいサービスを産む源泉なのだと痛感しました。
ぜひ今後のご活躍に期待したいと思います!

 

今後も、ビジネスにITを積極的に活用している方を不定期でご紹介していきます。どうぞお楽しみに。