オープンソースのおと


新たなITとビジネスイノベーションの融合に挑戦しているビジネスパーソンをご紹介する「ビジネスパーソンとOSS」。
第2回の今回は、B2B、FinTech、フロントエンドに特化したモバイルやクラウドサービスの企画・開発・提供を手がけるクラウドキャスト株式会社のCEOでFintech協会理事も務める星川高志さんです。

星川さんは元マイクロソフトのエンジニアであり、マイクロソフト在籍中に青山学院大学経営管理修士 (MBA)を取得され、その後クラウドキャストを立ち上げました。

「エンジニアとしての経験を10年、マネジメントの経験を10年、両方を経験したことがビジネスパーソンとしての自分の強み」とおっしゃる星川さんの、ビジネスとOSSに対する思いをお聞きしました。

 

クラウドキャストを立ち上げられて5年。多方面でご活躍のお話を耳にしますが、すばり、ビジネスの立ち上げに成功された秘訣ってなんですかね(笑)?

はい。おかげさまで多くのお客様やパートナーに支えていただき、業績を堅調に伸ばすことができています。

成功の秘訣(笑)と言っても、私にもよくわからないのですが、個人的には前職での経験を通じて、エンジニアの視点とビジネスの視点の両方を身につけることができたのが今のビジネスに活きていると感じています。

 

前職は、マイクロソフトの米国本社直属の開発部門長をされていたんですよね?

 

はい。新卒後10年間はエンジニアとして技術にどっぷり浸かり、開発者という立場で多くのことを学びました。転機になったのはマイクロソフト時代、英語が話せたということもあり、グローバルの開発チームのリーダーに抜擢されたのです。そこで多くのビジネスリーダーの方々とさまざまなディスカッションができたことは、とても有意義でしたね。

正直、当時はビジネスの知識をほとんど持ち合わせておらず、お客さんのCxOの方々はもちろん、社内のグローバルリーダーと会話するのも難しい状況でした。なので、ビジネスの知識を習得するためにマイクロソフト在籍中にビジネススクールに通い、MBAを取得しました。そこでは、ビジネスの知識はもちろんですが、多くの優秀な仲間に出会えたことが大きな収穫でした。

 

経営者となられた今でも、開発には携わっていらっしゃるのですか?

 

はい。さすがにコードをガリガリ書くことはないですが、サービスの設計や技術の目利き等には積極的に携わっています。

弊社の主力サービスである「Staple (ステイプル)」を含め、製品コンセプトやサービス設計には中心となって関わっていますが、アイデアを具現化する際はなるべく介在する人を減らすほうがスムーズですし、本当に作りたいものを作ることができます。そういう意味で弊社の開発チームは少数精鋭で、アイデアを直接伝えることで、イメージどおりのサービスを他社を寄せ付けない開発スピードで実現できていると思います。

 

今、サービスを実現される上でもっともこだわっているポイントは何ですか?

 

やはり、ユーザーファーストで使いやすいUI/UXを提供することがもっとも重要なことの一つだと考えています。

Stapleは経費精算サービスですが、この手のソフトウェアは管理側の発想で作られているものがほとんどなんですよね。それっておかしなことで、基本、経費精算をしない社員はいないので、「社員の誰もが使いやすい」ということを第一に考えるべきなんです。クラウドキャストを立ち上げた当初、コンシューマー向けのアプリを作成していたこともあり、一貫してユーザー目線でアプリ開発を行なってきました。そのため、使いやすいUI/UXを実現するという点では自信があります。結果として今年、業務アプリにも関わらず「Staple」で GOOD DESIGN AWARD 2017 を受賞できたことは大きな自信につながりました。

— StapleはOSSを活用して実現されたとのことですが、OSSへの思いをお聞かせ願えますか?

 

実はマイクロソフトで開発部門長をしていた時も、純粋に「OSSってすごいな」と思っていたんですよ(笑)。例えば、同じようなソフトウェアプロダクトを作り上げるのに数百人、多い時は数千人のエンジニアが数年かけるところを、OSSだと数十人の少数精鋭と多くのスモールコントリビュータが数ヶ月で作り上げてしまう。さらにOSSの世界では、丁寧なドキュメントが用意されているわけでもなく、グローバルに散らばる優秀なエンジニアが自分達自身で理解し、それを使いこなして自然に広がっていくんですよね。その中で良いものは残り、良くないものは自然と消えていく。すごくシンプルな世界だと思います。

 

確かに、OSSの世界は驚くほどスピードが早いですね。

 

そうですね。最新のOSS技術やGitHubなどのツールを使うことで、今まで実現することができなかったサービスをすばやく実装することができます。最近は、新しい技術はOSSから出てくるので、必然的にOSSを利用することになるんですね。

あとは、優秀なエンジニアを集める時にOSSを利用することは必須ですね。グローバルにはさまざまな多くのOSSコミュニティがあるので、利用したい技術に絞ってリクルート活動をすることができますし、高いモチベーションの即戦力を採用することもできます。今回「Staple」をバージョンアップするにあたり、フロントエンドにOSSであるReactJS/React Nativeを採用し、圧倒的な応答速度と開発効率化を実現しました。このような技術的判断を2年前にできる経営者は日本には少ないのではないでしょうか。

 

今、気になっているOSSコミュニティや技術はありますか?

 

弊社でもDockerを使い始めていますが、コンテナ技術は目からウロコでしたね。完全なゲームチェンジャーだと思います。Stapleは今後、お客様の要望や、パートナーとの協業に合わせて稼働するクラウド環境を変えていく必要があります。マルチクラウド環境を念頭に置いた場合、コンテナは実に便利な仕組みであり、今後ますます採用が進んでいくと強く感じています。