赤帽基盤部


明けましておめでとうございます。約1年ぶりの執筆となりますが、今年もよろしくお願いいたします。

年が明ける前の出来事ですが、Red HatのOpenStackディストリビューション であるRed Hat OpenStack Platform 10が2016年12月15日にリリースされました。コミュニティ版のリリースが10月6日ですので、概ね2ヶ月後の提供となります。これまでRed Hat OpenStack Platform(以下OSP)のリリースはコミュニティ版のリリースから間が空くことが多かったのですが、今後はよりスピーディな提供を目指しています。

OSP 10はOpenStack Newtonをベースにしており、提供されるコンポーネントは以下の図になります。

osp10コンポーネント

New Life Cycle

新しい特徴のいくつかを以下で述べてゆきますが、最も大きな特徴は製品ライフサイクルの変更です。OSPはこれまでは6世代のバージョンについて、一律3年間のサポートを提供していました。このポリシーが変更されて、OSP 10からは標準では1年間、Long Lifeと設定されたバージョンでは3年+延長2年間のサポートを提供します。OSP 10はLong Lifeバージョンであり最長5年間のサポートを受けられます。逆に言えば、OSP 11 や12を選択した場合どうなるのか?という不安を感じる方も多いと思われますが、Red Hatではバージョンアップを容易に行えるような仕組みを併せて提供していきます。

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新しい特徴

スケーラビリティの向上

RHOSPにはOpenStack DirectorというOpenStack環境のLife Cycle管理、 つまりOpenStack環境の計画・構築・運用を行う機能があります。先述のバージョンアップの容易さへの試みを鑑みて、Red HatのリファレンスアーキテクチャーではOpenStack Directorを利用してインストールすることが前提となっております。

OpenStack環境には、ざっくりと言うと、管理機能を司るController Node、仮想インスタンスが稼働するCompute Node、ストレージ領域となるStorage Nodeが存在します。OpenStack Directorはネットワークに接続されたサーバを検出し性能情報の取得を行い、各サーバに上記3種類のいずれかの役割を割り当ててゆきます。

Controller NodeではControllerのサービスであるKeystoneやNeutron、Maria DB、RabbitMQ等が稼働します。実を言うと、OSP 9までのDirectorではControllerサービスはすべて同一のサーバにインストールするようになっており、このサービスの配置方法を変更することができませんでした。OSP 10ではこの点が大きく改善され、どのサーバにどのサービスをインストールするかをカスタマイズすることが可能になりました。役割や負荷ごとにサービスを分散させることができ、スケーラビリティの向上が望めます。

ComposableService

ユーザビリティの改良

そんな素晴らしい(?)OpenStack Directorですが、これまではCLIのみで「使い勝手が…」というお声もたくさん頂きました。かなり前から開発は進められていたのですが、やっとGUIが公開されました。Webベースで、フローに従って進めてゆけばOpenStack環境を構築することが可能です。

DirectorGUI

ネットワークパフォーマンスの拡張

OpenStackの従来のネットワーク構成では、ルーティングを司る仮想ルーターは専用のNetwork Node(Controller Nodeと同一の場合が多い)で稼働します。これを集中制御ルーティングと呼びます。この構成では、すべてのL3トラフィックはNetwork Nodeを通ることになり、トラフィックのパターンや量によってはこの部分がボトルネックになる場合も考えられます。これに対してDVR(Distributed Virtual Route)は、インスタンスが稼働するCompute Node上に仮想ルーターを分散配置してトラフィックを処理する方式です。Neutron標準ではコミュニティ版のOpenStackではJunoからDVRが実装されていましたが、Red Hatでは長らくTech Previewの状態でした。OSP 10では、集中制御ルーティングまたは分散仮想ルーティングを選択できるようになりました。

この他に、NFV(Network Function Virtualization)分野で期待されるネットワーク性能向上のための機能がフルサポートされています。

  • Open vSwitchの新しいデータ・プレーン・デベロップメント・キット(DPDK)
  • シングル・ルートI/O仮想化(SR-IOV)

ベアメタルプロビジョニング

ベアメタルプロビジョニングのプロジェクトであるIronic。OSP 10以前でもサポートしておりました。そもそもOpenStack DirectorはTriple Oという仕組みをベースにしており、Triple OはIronicを利用しています。では、ユーザーがIronicの仕組みを使いたい場合どうなのか?という点においてOSP 10以前ではDirector環境では導入できず、手動でのIronic導入が必要でした。OSP 10からはベアメタルプロビジョニングサービスがユーザーが利用するOpenStack環境(OverCloud)でサポートされます。すなわち、共有されたハードウェアリソースプールを必要に応じてユーザーがプロビジョニングできるようになります。

ベアメタルプロビジョニングにはハードウェアのドライバー等の観点も必要になるため、ドライバーの成熟度や互換性を確認して認定するBare Metal Provisioning Certification Programが提供されています。

 

最後に

Red Hat OpenStack Platform 10の主に管理機能観点の特徴を述べてきましたが、コアコンポーネント(Nova,Glance,Cinder,Neutron,keystone,Swift)の機能の改善や増強も多々行われております。次回はDeep-Diveと称して、細かい機能について説明してゆきたいと思います。希望があれば、ですが。

レッドハット・エバンジェリスト・プロフィール

輿水 万友美

輿水 万友美 こしみず まゆみ

レッドハット株式会社 OpenStackエバンジェリスト
法人/個人向けISPを経て、マネージド・サービスIDCの立上げに従事し、サーバー/ネットワークエンジニアとして主にOSSを利用す るサービスの提案から運用まで行う。その後、SIベンダー時代にサービス開発業務でクラウドに出会う。 元CloudStackユーザー会会長だが現在はOpenStackに携わる。好きなサーバーはビールサーバー。