赤帽基盤部


2017年5月16日(米国時間)、Red Hatでは9番目となる「Red Hat OpenStack Platform 11(以下、RHOSP 11)」がリリースされました。RHOSP 11は今年2月にコミュニティからリリースされたOcataをベースにしています。

RHOSP 11は、RHOSP 10から導入されたRHOSPライフサイクルでのショートライフのバージョンにあたります。ショートライフバージョンでは、サポートは運用フェーズ 1をスキップして運用フェーズ 2から始まり、12カ月間のサポートが提供されます。延長ライフサポートは提供されません。(Red Hat OpenStack Platform のライフサイクル参照)

ユーザーは目的に合わせてロングライフバージョンとショートライフバージョンのいずれかを選択することになりますが、選択する際の判断要素の例としては以下のような項目が考えられます。

 

要素 最新(機能にフォーカス) 標準化
OpenStack機能 upstreamの機能を追いかけたい 現時点の機能で十分
性能 より良い性能を求める 現時点の性能で十分
ハードウェアスペック 異種混合。コンスタントに新しいもの追加したい。 同種
データセンター数 多数のデータセンター。要レプリケーション。 いくつかのデータセンター。レプリケーションの必要は無し。
ID管理 複雑なIdM 、多数の組織、SSOの必要性 シンプルな設定。階層構造は不要。
DevOps Maturity agile、モダンツール Waterfall,、従来型のオペレーション

 

Red Hat OpenStack Platform 11 のトピック

  • Composable Upgrades ( director )
    ansibleベースの、サービスごとのアップグレードロジックの導入
  • Depoly HA services ( director )
    pacemaker管理下のサービスの配置の柔軟性の向上
  • NFV/Teleco向け機能強化
    OVSとDPDKバージョンアップ
    VLAN-aware VMのフルサポート
    Heper-Converged infraのフルサポート
  • ストレージ機能の増強
  • CloudFormとの統合
    4.2はテスト済で、4.5への準備中
  • ComputeとIronicの機能強化
    IronicでLLDP discoveryが可能に
    directorでのEC2 API のデプロイ

上記のトピックの中から、RHOSP 11のハイライトであるComposable Upgradesをご紹介します。

Composable Upgrades

OpenStack DirectorはRHOSPが提供するOpenStack環境のデプロイツールでありライフサイクル管理を行うためのツールです。RHOSP 10から、Composable Services and Custom Roles というデプロイ方法が導入されています。DirectorはTriple Oベースのツールで 、Heat を利用してovercloud(=ユーザーが利用するOpenStack環境)をデプロイしますが、Composable Roleではovercloudの主要な構成要素をグループ化して、各サービスを複数のHeatテンプレートで定義します。あらかじめ標準的なController、Compute 、 Block Storage、 Object Storage、 Ceph Storageの5つのRoleが定義されていますが、顧客自身がサービスの配置方法をカスタマイズして、よりニーズに合った顧客固有の環境を作ることが可能になっています。

アップグレードに関しては、Composable Roleより前は、巨大で複雑なコードセットによって各ステップが正しく実行されたかを管理する必要がありました。Composable Role導入による柔軟性のあるデプロイに対応すべく今回、アップグレードプロシージャを完全にリファクタリングし、モジュール形式の小さなAnsibleコードにしました。これらのAnsibleコードは Heatによって統合・オーケストレートされ、Director のワークフロー従って動作します。このリファクタリングにより、アップグレードロジックを各サービスのテンプレートに直接書くことができるようになりました。サービステンプレートはアップグレードのステップとアクションをハンドリングするAnsible playの集合を持っています。各Ansible playは、タグ付けされた値を持ち、Heatはタグに従って各ステップをチェックします。これによって、アップグレードプロセスは細かくコントロールされ、実行されるようになりました。

例として、Pacemaker のupgrade_tasksセクションを見てみます。( tripleo-heat-templates/puppet/services/pacemaker.yaml 参照)

      upgrade_tasks:
        - name: Check pacemaker cluster running before upgrade
          tags: step0,validation
          pacemaker_cluster: state=online check_and_fail=true
          async: 30
          poll: 4
        - name: Stop pacemaker cluster
          tags: step2
          pacemaker_cluster: state=offline
        - name: Start pacemaker cluster
          tags: step4
          pacemaker_cluster: state=online
        - name: Check pacemaker resource
          tags: step4
          pacemaker_is_active:
            resource: "{{ item }}"
            max_wait: 500
          with_items: {get_param: PacemakerResources}
        - name: Check pacemaker haproxy resource
          tags: step4
          pacemaker_is_active:
            resource: haproxy
            max_wait: 500
          when: {get_param: EnableLoadBalancer}

Heatはまずはstep 0、次にstep 1(この例ではstep 1は無し)、その次にstep 2、Step 4というようにplayを実行します。これはansible-playbookを –tまたは –tagオプションで実行するようなもので、タグの値が付けられたplayのみを実行します。

このようにComposable upgradesはリリース間の安定したアップグレードパスを提供します。アップグレードプロセスを簡素化し、信頼性を上げ、容易に制御できる能力を提供します。また、モジュール形式で理解しやすい方法で、アップグレードロジックを実行しカスタマイズできるようにしています。

Hyper-Converged Infra

Hyper-Converged InfraはComputeとCeph OSDを同一サーバーで稼働させるアーキテクチャーです。RHOSP 10ではテクノロジープレビューでしたが、11から正式にサポートされました。Compute NodeとCeph Nodeを分ける必要がないため、ハードウェアの削減につながります。また、Hyper-Convergedも非Hyper-Converged構成もCustom Rolesを利用して、同様にDirectorを利用してデプロイ出来るようになりました。

HCI

Red Hat OpenStack Platformの今後

今回のRHOSP 11はライフサイクルの観点からすると、ショートライフであり、導入においては懸念される方も多いかと思います。しかしながら、アップグレードの仕組みは継続的に改善されており、目的に応じて、新機能が導入されたOpenStackまたは安定したOpenStackのいずれかをユーザーは選ぶことが可能となっています。

コミュニティ版OpenStackはすでに次のリリースのPikeに向けて動いており、我々もRHOSP 12、13へのバージョンアップを視野に入れております。今後はインフラ環境にも継続的インテグレーションが必要になってくると思われます。

もし、バージョンや導入にお悩みの場合は、レッドハッドへご相談いただければと思います。

レッドハット・エバンジェリスト・プロフィール

輿水 万友美

輿水 万友美 こしみず まゆみ

レッドハット株式会社 OpenStackエバンジェリスト
法人/個人向けISPを経て、マネージド・サービスIDCの立上げに従事し、サーバー/ネットワークエンジニアとして主にOSSを利用す るサービスの提案から運用まで行う。その後、SIベンダー時代にサービス開発業務でクラウドに出会う。 元CloudStackユーザー会会長だが現在はOpenStackに携わる。好きなサーバーはビールサーバー。