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九州電力では近年、スマートメーターの導入などに伴うシステム対応に取り組んできた。そして、改革の中心となるシステムの基盤にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)とRed Hat JBoss Middlewareを採用した。その背景と導入に至る決め手などについて、九州電力株式会社 理事 情報通信本部 情報システム部長 植村隆文氏に、レッドハット株式会社 代表取締役社長 望月弘一が伺った。

九州電力×レッドハット エグゼクティブ対談

九州電力株式会社
理事 情報通信本部 情報システム部長
植村 隆文

レッドハット株式会社
代表取締役社長
望月 弘一

■電力システム改革関連サーバーでレッドハット製品が稼働

望月弘一(以下:望月) 本日はお時間をいただきましてありがとうございます。まずは簡単にレッドハットの紹介をさせてください。 弊社は1993年の創業以来一貫して、お客様が安心してオープンソースソフトウェア(OSS)をご利用いただける環境を提供すべく、活動を続けております。 特に2002年以降は、エンタープライズ分野をビジネスの中心として、より安定した信頼性の高い製品やサービスをご提供できるように努めています。創業当初はRed Hat Enterprise Linuxと呼ばれるOS製品のみを取り扱っていたのですが、急速なOSSの広がりに応じて、Red Hat JBoss Middlewareに代表されるミドルウェア製品をはじめとして、仮想化・クラウドなど数多くの分野のOSS製品をご提供するまでに至っています。

植村隆文氏(以下:植村) オープンソースソフトウェアというとソフトウェアの設計図が開示されているということで、通常のビジネスとして考えると競争優位の源泉を開示するのはちょっと考えられないと思いますが、どのようにしてビジネスとして成り立っているのでしょうか。興味があります。

望月 素晴らしいご質問をありがとうございます。レッドハットではよくOSSを人類の共通財産である水に例えて説明します。OSSはソースがオープンで世界中の人間が誰でも入手し使うことができるという点で、水と同じ共通財産ということができると思います。
ただ、水は誰でも入手し使うことができますが、用途により、例えば飲料水として利用する場合にはそれがどのような水なのか、飲料に値するのかなどを水道局や飲料メーカーなどが保証する必要があります。
レッドハットでは人類の共通財産であるOSSを推進するために、水道局のように開発コミュニティとSIerなどのパートナーとユーザー様の間に立ち、調整や品質を保証することでビジネスとしているのです。

植村 なるほど、よくわかりました。

望月 ありがとうございます。九州電力様にはOSS及びレッドハット製品をご利用いただいています。そうした中、今年4月からの電力システム改革にあわせて開発されたITシステムが、OSであるRed Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)とミドルウェアであるRed Hat JBoss Middlewareで稼働しています。
そこで、電力システム改革をはじめとする電力業界の動きについて、あらためてお聞かせ願えますでしょうか。

植村 今年4月の電力の小売全面自由化については、報道などで広く知られていると思います。電力の小売はこれまで、大規模施設用から小規模施設用、一般家庭用と、段階的に自由化されてきました。
その一連の取り組みが「電力システム改革」と呼ばれています。具体的には、2015年の電力広域的運営推進機関の設置、2016年の小売と発電の全面自由化、2020年の法的分離の3段階からなります。電力の小売と送配電、発電を分離することで、競争をうながすのが目的です。

望月 私も一市民として、電力システム改革は日本全体にかかわる極めて大きなパラダイムシフトだと思っています。その対応にあたり、ITシステムとしても新しく、また大変なチャレンジがあったのでしょうね。

植村 そうですね、電力システム改革への対応にあたり、九州電力では大きく分けて4種類のITシステムを新しく開発する必要がありました。1つめは、スイッチングシステムと呼ばれる、利用者の乗り換えを受け付けて契約などを処理するシステムです。
2つめは託送システムです。送配電会社は送配電網の利用料金として、託送料金を電力小売事業者に請求します。そのためのシステムです。
3つめは、営業システム(CIS:顧客情報システム)です。九州電力の電気を九州以外の地域でも販売するために、顧客管理や電力料金計算などのために新しいシステムを開発しました。
4つめとして、電力システム改革にあわせて現在スマートメーターの導入を推進しておりますが、それに関連するシステムです。スマートメーターは従来の機械式メーターに代わるメーターで、通信機能を備えており遠隔地からの検針や接続・切断が可能です。それによって、電気使用量の見える化やライフスタイルに合わせた電気の利用につなげたり、電力の遮断や復帰をリモートから操作するといったことが可能になります。

望月 近年話題になっているスマートグリッドを実現する次世代のメーターですね。

植村 ええ、スマートメーターでは、電力会社側の施設にも、メーターからの大量のデータを集約して計算するシステムが必要となります。具体的には、メーターから送られてくるデータを受信するHead End System(HES)と、HESからデータを受けて集計し、見える化や小売事業者へのデータ提供などを行うMeter Data Management System(MDMS)の2つのシステムを開発しました。

望月 大量のデータとはどのぐらいの量になるのでしょうか。御社が主に担当する地域から考えると膨大な量になりそうですね。

植村 現在九州の世帯数は約800万世帯と言われています。そこから30分毎に電気使用量等のデータが送られてくるわけです。それを高速かつ正確に集約及び各種処理を行う必要があります。

望月 800万のデータが30分毎ですか!それは他に例のない膨大なデータ量になりますね。しかも社会インフラを支えるシステムとして絶対の信頼性が必要なわけですね。

植村 おっしゃる通りです。その絶対の信頼性が必要な4種類の新システムの基盤として、今回御社のオペレーションシステム(OS)とミドルウェア(MW)を全面的に採用しました。約200台のサーバーで現在、トラブルもなく安定的に稼働しており、担当者からも実に高品質であると聞いています。

望月 レッドハットのOSであるRHELに代表されるOSSはかつては無料の代替品と思われ、商用ソフトウェアより信頼性が劣るものと見られていました。しかし、レッドハットのエンタープライズ向けディストリビューションの積極展開などにより、いまでは信頼性やサポート体制が大幅に向上して、企業の基幹システムから証券会社のシステムまで、ミッションクリティカルな環境でごくあたり前のように利用されています。九州電力様のように社会の根幹をなすインフラでOSSが使われていることに、レッドハットとして誇りと責任を感じます。

植村 電力輸送といった電力インフラのシステムは、社会インフラの根幹となる決して止めてはいけないシステムです。私が電力輸送部門畑出身ということもあって、「スマートメーターなどのシステムは、電力輸送の制御システムと同じだけの信頼性や可用性、品質を担保すべきだ」と、口が酸っぱくなるほど言っています。そのための基盤としてレッドハットを信頼しており、社会インフラを作ることができたと思っています。

望月 素晴らしいお考えですね。社会や人命を支える仕組みをITが支える場面が、今後も加速度的に増えてくると思います。我々もその一翼を担う者として改めて身の引き締まる思いです。
また、嬉しいお言葉をありがとうございます。大変光栄です。

植村 今回、電力システム改革の基盤として採用を決めた理由の1つとして、弊社として過去にレッドハットOSでのシステム構築、運用、保守の経験があった点がありますが、さらにはコスト面でも大きな効果を実感することができ、大変満足しています。

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