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木村 哲也 氏 × クレイグ・ムジラ

 自動車部品の製造を行う旭鉄工では、3年前から自社工場の機械にセンサーを取り付け、稼働データを収集/集計して生産効率を上げることに取り組んでいる。同社の活動にITはどんな役割を果たしているのか、その中でレッドハットはどのように貢献できるのか。代表取締役社長の木村哲也氏と米国レッドハット シニアバイスプレジデントのクレイグ・ムジラに聞いた。

人には付加価値の高い仕事を!
データの収集や集計はITに任せ、
人は現場の改善に集中すべき

——木村社長には“日本の製造業全体を強くしていきたい”という思いがあると伺いました。今の製造業には、どんな課題があるとお考えでしょうか。

旭鉄工株式会社 代表取締役社長 木村 哲也 氏

木村氏:例えば私たちのいる自動車業界では、Uber(※1)のような破壊的なビジネスモデルが登場してきています。私も今年(2016年)7月に米国でUberを利用してみましたが、やはり便利です。今では車を買わなくても簡単に移動できる手段が広がりつつあり、これからカーシェアリングも進むでしょう。自動車の生産台数は今後、世界全体でドラスティックに減っていくと思います。
 一方、国内では少子高齢化が進み、なかなか人が採用できないという悩ましい問題があります。特に中小企業では深刻で、少ない人数でモノを作っていく必要があり、今後は市場規模が縮小していく。賢くモノを作っていかなければ、生き残ることはできないでしょう。

——そうした現状を打破していくために、製造業にはどんな取り組みが必要だとお考えですか。

木村氏:私が常に念頭に置いているのは、“人には付加価値の高い仕事を”ということです。今回私たちが構築したIoTの仕組み(ユーザー事例を参照)では、機械の生産数や稼働停止時間を正確に把握することができます。それはそれで実に重要な作業ですが、収集したデータを見て、現場をどう改善していくかは、人でなければ考えることができません。賢くモノを作っていくということは、人がより付加価値の高い仕事にシフトしていくということなのです。

——今回構築されたIoTの仕組みによって、御社は設備投資額を約3億円削減されました。その中でITは、どのような役割を果たしたのでしょうか。

木村氏:機械にセンサーを取り付け、データを収集、集計するところでITを利用しています。現在のIoTインフラとしてはベーシックなものかもしれませんが、私たちのすべての改善活動の基盤となるもので、なくてはならない仕組みです。
 また、以前は何か変更があった時のプログラムの改修にかなり時間がかかっていたのですが、今回ルールエンジン(Red Hat JBoss BRMS)を含む一連のレッドハットソリューションを採用したことで、環境変化にも柔軟に対応できるようになりました。その際に私が求めたのは、シンプルさ、使いやすさであり、こうした要素があってこそ、事業活動に必要なPDCAサイクルを迅速に回していくことができる。それによって、人がより付加価値の高い仕事に注力できるようになると考えています。

ITに求める要件は、シンプルさと使いやすさ。
それが、事業活動に必要なPDCAサイクルを
迅速に回すことにつながる

——今、木村社長からシンプルさ、使いやすさというお話がありましたが、これらも含め、レッドハットは企業に対してどんな価値を提供できるのでしょうか。

米国レッドハット シニアバイスプレジデント アプリケーションプラットフォームビジネス クレイグ・ムジラ

ムジラ:企業では現在デジタルトランスフォーメーションが進んでおり、今回のようなIoTのソリューションを活用して自社の業績を上げていこうという取り組みが進められています。その過程では多様なコアテクノロジーが必要で、OSやミドルウェア、データベースはもちろん、各センサーとコンピュータとを繋ぐメッセージング技術や、大量のデータを分析するためのルールベースの処理技術なども重要です。
 ただしこれらの機能はインフラレイヤーで、お客様がわざわざ研究開発費を投下しなくともいい領域です。そこでインフラ部分の機能はレッドハットが全方位的にご提供し、お客様には業務改善や業務改革など、いわゆるアプリケーションレイヤーに注力して競争力の底上げをしていただきたいというのが私たちの思いです。

——レッドハットならではの強みとして、オープンソースソフトウェア(OSS)が挙げられます。

ムジラ:その通りで、私たちの持つ最大の差別化要因はOSSです。OSSを採用することで、お客様はITコストを削減しつつ、必要なシステムを、よりフレキシブルに作ることが可能になります。まさにシンプルかつ使いやすいシステムを構築するために有効な手段となるもので、さらにOSSは新たなビジネスモデルの創出にも大きく貢献するものです。
 例えばレッドハットのお客様で、欧米の鉄道業向けに、公共交通機関の価値向上を目的としたIoTソリューションを提供している企業があります。同社では、鉄道の安全性を高めるため鉄道車両にセンサーを付けて、車両のスピードや位置情報などをモニタリングするIoTアプリケーションを提供しています。
 この仕組みの中では、各ノードとコンピュータを繋ぐためのメッセージング機能が必要になります。かつてはこれを自社開発されていましたが、レッドハットが提供するメッセージングプラットフォーム「Red Hat JBoss A-MQ」を採用され、自社の予算と人員をIoTアプリケーションそのものの開発に集中されました。
 旭鉄工様の事例は日本が誇る最先端の取り組みですが、グローバルでも最近、次世代プラットフォームのOpenShiftを基盤としてアプリケーションを開発したいというお客様のニーズが高まってきています。こうした点においても、レッドハットには大きなアドバンテージがあると考えています。

——一方、ユーザー企業の立場から、ITパートナーとしてレッドハットを選択されたのは、どのような理由からでしょうか。

木村氏:今回の仕組みを構築するにあたり、私は自分自身でIoTをテーマにしたいろいろなセミナーに参加して話を聞きましたが、どれもIT用語の羅列で正直ピンと来ませんでした。その中で立ち寄ったレッドハットの展示ブースでは、ビジネスの視点からさまざまな話をしてくれました。その後あらためて会社に来てもらい、相談したのですが、私たちの目線で当時の状況の問題点を解きほぐし、ステップを踏んで解決策を提示してくれたのです。この会社なら任せられると感じました。

IoTによる稼働状況の見える化で生産性向上、コストを大幅削減

OSSはコスト削減だけでなく、
新たなビジネスモデルの
創出にも大きく貢献している

——今後、さらにどのような取り組みをされていきたいとお考えですか。またレッドハットには、どんな役割を期待されているでしょうか。

木村氏:今年9月、私たちは新会社を設立(※2)し、今回のIoTの仕組みをSaaSとして他の製造業にご提供するサービスを開始しました。将来的には、SaaSで蓄積される膨大な稼働データを分析し、遠隔コンサルティングサービスもご提供したいと考えています。私たちにはデータを分析して改善活動に繋げてきた確かな知見があり、生産ラインで不具合が発生した時でも、稼働データを見れば何が問題なのかを予測することができる。現場確認の前に、まず遠隔で原因と解決策までの見当を付けておくことができれば、通常のコンサルティングサービスに比べて格段に速いスピードで、かつ低コストで改善を進められると思います。
 私たちがこうした取り組みを進めていく過程では、こんなシステムやあんな機能がほしい、という要望が次から次へと出てくるでしょう。その時にも“シンプルで、使いやすい”という要件は絶対に外したくありません。レッドハットには引き続き、そんなシステムを最速で確実に開発するための支援をお願いしたいと思います。

ムジラ:例えばレッドハットでは現在、インテリジェントな形でデータを処理するためにApache SparkというテクノロジーをOSSプロジェクトとして検討しています。実用化の目途が立てば、今後私たちのルールエンジンやOpenShiftにも実装していきたい。遠隔コンサルティングでも必ずご活用いただけると考えています。
 OSSの大きな特徴と魅力は、新たな価値を作ることに強い関心を持つ人たちが、自分たちが使いたいものを自分たちで作っている、という点です。それによって物事はより速く進み、よりイノベーティブになる。この点において、木村社長の考え方や発想はOSSと相通じるところがたくさんあります。今回の御社の取り組みも、自動車部品業界にとって、さらには日本の産業界全体にとって、とても参考になる事例だと思います。

※1 Uber:米国企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車Webサイトおよび配車アプリ。

※2 i Smart Technologies 株式会社(istc.co.jp) IoTソリューションやクラウド環境を利用し、ラインの生産数や停止時間など現場で必要な情報をリアルタイムに自動検出・見える化するシステムを開発、サービスとして提供。


関連リンク

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≫ Red Hat JBoss Enterprise Application Platform
≫ Red Hat JBoss BRMS
≫ ビジネスにおけるIoTの意味とは