Embedded Program コラム


当コラムへようこそ。レッドハット Embedded Programを担当している、レッドハット セールスの田中と申します。
このコラムでは、IoTや組込み開発に関わる方々に向けて、組込み技術やソリューションに関する動向、それらに対する技術者の思い、そして私どもが営業活動において日頃感じていることなど、弊社の製品の枠にとどまらず幅広くお伝えしていきたいと思います。

初回となる今回は、皆様の大方の予想を裏切り、技術に関する話題ではなく、Linuxに関わる営業担当者が、一度は必ず直面する話題から取り上げてみたいと思います。

「Linuxはコミュニティが開発しているのでしょ、無償のものを持ってきてサポート料金をとっているんじゃない?」

日本においては未だに聞かれる言葉です。「残念ながら」という枕詞をつけたいところではありますが、欧米と比較して企業の社内にIT部員が少ない日本の状況からすると、Linuxのコミュニティ活動や仕組みについて、いまだに知られていない点があるのはやむを得ないのかもしれません。
ところで、Linuxの実際の開発って、誰がどのように行っているのかご存知でしょうか?

Linuxには、Linux Foundationという団体があります。そこからホワイトペーパーが発行されており(簡単な登録さえ済ませれば、ダウンロードも可能です)、その中に「Linux Kernel Development:How Fast is Going, Who is Doing It, What They are Doing, and Who is Sponsoring Its(邦題:Linuxカーネル開発:それはどれほどの速度で進み、だれがどのように作業し、どこが支援しているのか?)」というものがあります。これを参照すると、その回答が見えてきます。

「Who is Sponsoring at Work」という章で紹介されている表を参照すると、カーネルChangeの数と全体に占める割合が出ています。例年、1位は個人の方々の貢献(表内、None)です。そして、目につくのはIntelやSamsung、Texas Instrumentsなどのセミコンベンダー。Red Hatは常に2位か3位に位置しています。Linuxに関するベンダーですから当たり前なのですが。IBMも毎年上位でがんばっています。
でも、ちょっと待ってください。この表を別の角度から見ると、各企業のLinuxへの投資と力の入れ具合が見えて来ないでしょうか?

Linux Kernel Developmentへの貢献

※Linux Foundation「Linux Kernel Development 」 Linux Foundation 2015 White Paperより

 

この表に企業名があるということは、その企業がLinuxのカーネル開発への専任の担当者と部署を置き、企業として貢献しているということでもあります。つまり、企業としてLinuxの開発に投資しているわけです。Linuxがオープンソースという誰でも利用できるソフトウエアでありながら、同時にビジネスとして利用することを認めているのは、個人の貢献に加えて多くの企業の投資によって成り立っているということを示しています。
ちなみにこの表は、10年ほど前に私がRed HatのOEMベンダーに在籍していたとき、草創期のRed Hatのビジネス拡大に大きく寄与した当時の上司から教えてもらったものです。

ところで、この表に出ている企業の移り変わりを眺めていると、個人としてはとても感慨深いものがあります。10年前ほどでしょうか、当時のトップ10のなかには、日本の企業が2~3社入っていました。(それらのうち何社かは、現在日本のレッドハットのOEM先にもなっています。)日本の企業もLinuxの習熟とビジネスの展開を目指し、企業として人と組織に投資し、LinuxのKernel Developmentに貢献していたのですね。当時、LinuxのKernel Developmentに従事していた方々は現在、各製品部門やLinux部門の中核となり、Linuxに関する開発やビジネスを推進しています。

さて、一方で“組込み”という観点から考えてみましょう。10年前は、日本のセットメーカーもこの表の上位を占めていました。実は、日本では組込み分野でのLinuxの導入は早く、一時は私が在籍していた組込みLinuxの会社全体の売上の50%以上を占めていたほどでした。古くからあるitron系のOSも頑張る一方、当時まだ新しかった組込みLinuxも急速に普及したところが、日本市場の面白さでもあります。ただ、最新のランキングには組込みLinuxのOSベンダーがまったく入らなくなってしまったことが残念です。10年前は、上位で気を吐いて頑張っていたベンダーがあったのですが・・・。

今一度、見方を変えてみましょう。組込みLinuxのベンダーが上位にいないということは、現在のLinux Kernelには組込みで必要な機能がすべて備わってきていると考えても良いかと思います。それを裏付けるように、Red Hat Enterprise Linuxは組込み分野でも採用が拡がってきています。

また、前述の表で目を引いたのはRenesas Electronicsが13位に入ってきていることです。久しぶりに日本の会社名を見ました。セミコンベンダーが上位に入るときは、その後に新しいプロセッサなどがリリースされることが多いので、おそらく新しいプロセッサのOSとして、Linuxに力を入れてきているのかもしれません。(セミコンベンダーの順位の入れ替わりを見ていると、そんなことも見えてきます。最近では、組込みプロセッサの評価用にLinuxが標準で添付されていますから)

そろそろまとめに入りたいと思います。このコラムの最初の言葉を、今一度思い出してみてください。
「Linuxはコミュニティが開発しているのでしょ、無償のものを持ってきてサポート料金をとっているんじゃない?」

もう、そうではないことをご理解いただけたかと思います。世界中の個々人の開発者の英知とLinuxに関わる各社の投資、それらの貢献の粋を集めたもの、それがLinuxなのです。

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RED HAT Embedded Program

Red Hat Embedded Program

Red Hat Embedded Programは、エンタープライズで利用されているRed Hat Enterprise LinuxやRed Hat JBoss Middlewareなどを組込み向けに提供します。組込みデバイスやコントローラなどのIntelligent Systemだけではなく、データセンターにおいても適用可能なプログラムです。