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 レッドハットは2016年7月6日、この5月に開所した中部営業所の開所記念セミナーを名古屋市内で開催した。セミナーには、地元の製造業、電力会社を中心に多くのパートナー企業やエンドユーザーが集まり、新たなスタートを祝った。セミナーの内容をレポートする。

 セミナーでは、冒頭レッドハット代表取締役社長の望月弘一が挨拶に立ち、レッドハットへ寄せられる熱い支援に感謝するとともに、大要を次のように語った。
 望月は、レッドハットは国外において安定的に事業の進展を遂げ、日本国内でもほぼ同等の成長を果たしていると報告し、今後の事業展開については、Red Hat Enterprise Linuxを土台としつつ、クラウド、ITマネジメント、アプリケーションプラットフォームの3つを強化領域としていくとした。さらに今後10年のビジネス基盤の基礎を築く上での最重要テーマとして、(1)OpenStackプラットフォームの積極的な提案(2)Ansibleを活用したIT Automation Solutionの立ち上げ(3)アプリケーションプラットフォームとしてのコンテナの定着化(4)クラウドおよびオンプレミスにおいてもLinux(Red Hat Enterprise Linux)で市場をリードし続けることの4点を挙げた。
 望月は、こうした事業展開の基盤づくりの上でも、今回の中部営業所の開設は大きな意味があるとし、地域におけるOSSの普及への取り組み、顧客のビジネス・イノベーションに貢献していきたいと抱負を述べ締めくくった。

 そしていよいよ、プログラムはユーザー事例のセッションへ。今回予定されていた4社の講演の先陣を切ったのは、トヨタ自動車だ。登壇したトヨタ自動車株式会社 ITマネジメント部 システム基盤室長 石原直樹氏は「トヨタのIT基盤におけるOSS活用事例」と題して、同社のOSSへの取り組みとその活用について具体的に紹介した。

石原直樹氏

トヨタ自動車株式会社
ITマネジメント部 システム基盤室長
石原 直樹(いしはら・なおき)氏

 続いて、ヤマハモーターソリューション株式会社 事業開発・技術セクタ アーキテクチャ統括部 統括部長の古嵜智志氏が講演。
 同社は、ヤマハ発動機の情報システムを企画から運用まで一手に引き受けるITソリューションカンパニーだ。古嵜氏によればヤハマ発動機では、2007年から将来のクラウド化を見据え、基幹産業領域においてOSSの標準化を開始。以降アメリカ、シンガポールの拠点へ順次OSS導入を図ってきた。2015年以降になると、第二世代の実行環境構築の取り組みを始め、実行基盤の改定と強化を進めてきたという。

古嵜智志氏

ヤマハモーターソリューション株式会社
事業開発・技術セクタ
アーキテクチャ統括部 統括部長
古嵜 智志(ふるさき・さとし)氏

 今後については、日本、中国、インドの3拠点で「イノベーション・センタ」(仮想組織)を立ち上げ、より付加価値のある領域へのチャレンジを模索していく。
 またOSS活用に関する今後の課題として、古嵜氏は大きく2つのポイントを挙げた。まずOSSコミュニティ版と商用版の役割分担について。ヤマハ発動機がこれまで使ってきたコミュニティ版は、年々アップデートが早くなっていることもあり、今後は検証・トライアル版という位置づけとし、商用版をサポート付きの安定バージョンと位置づけていくとした。今後はコミュニティ版と商用版を領域ごとに使い分けることを検討したいとし、レッドハットとの一層の連携を図りたい旨を表明した。
 2つめの課題として、社内のビジネスモデルの変革とスキルシフトを挙げた。クラウド化の進展はこれまでの工数ベースの事業スタイルを不合理化し、より付加価値の高い仕事へとシフトを余儀なくさせる。このことは、アプリ開発領域におけるOSS活用についても同様で、既知の安定的・画一的なコード開発スタイルだけでなく、システム利用者と緻密なコミュニケーションをしながら、新しいアイデアを見つけていくスキルが大事になると語った。
 古嵜氏は最後に、レッドハット中部営業所の開設を祝し、今後もOSS普及に尽力をと要望した。

 続いて、国内外でレッドハットと提携するパートナー企業である富士通株式会社から、グローバルSI技術本部 OSSインテグレーションセンター長の来海 清氏が登壇した。
 来海氏は同社のLinux 開発の取り組みについて、OSSコミュニティにおける開発支援を通して機能強化、品質強化、サポート品質の向上を推進。その成果として、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)は、商用UNIXに比する品質を誇っていると胸を張った。またサポート体制についても、RHELの専任技術者が責任をもってトラブル解決を支援し、99%を富士通内で解決している。顧客が利用してきたメインフレームと同等のサポート体制を敷いてきたという。

来海清氏

富士通株式会社
グローバルSI技術本部
OSSインテグレーションセンター長
来海 清(きまち・きよし)氏

 続いて、来海氏はRed Hat JBoss Middlewareへの取り組みについても言及。2003年の提携以来、レッドハットとの連携を徐々に強化し、2011年からはRed Hat JBoss Middlewareのファーストラインサポートを提供開始している。さらに富士通「SupportDesk」ではRed Hat JBoss Middlewareのラインナップのうちアプリケーションサーバー、データ仮想化、ビジネスプロセスマネジメント用途で4製品のサポートの提供を始めた。今後、このラインアップは順次拡大を予定していくという。
 OSSテクノロジーへの富士通としての関わりについて来海氏は、これまでと同様に今後についてもOpenStack開発コミュニティへの取り組みを深化させていきたいとした。
 最後に、レッドハット中部営業所の開所をはずみに、OSSを利用する顧客支援について、レッドハットの一層の協力を求めた。

 次いで株式会社大和総研ホールディングス顧問でありレッドハットユーザー会会長の鈴木孝一氏が登壇、記念講演を行った。
 鈴木氏はまず、人類がたどってきた変革の歴史を概観し、現代では加速するITの進化がビジネスに次々と変革をもたらしている事を指摘。最新のビジネスシーンにおいては、利用者が個別の情報を収集し判断する必要はなく、個人の趣向などを理解して利用者目線で適切なアドバイスをしてくれるAI型モデルが実現に近づこうとしている。今後はAIを中核とした多様なサービスが生まれてくることが期待される。
そんな時代にあっては、これまでのベンダー主導型ビジネスに変わり、ユーザー各社が主導してシステムの開発を図っていかなければならないとし、そうでなければ大規模なグローバル企業に太刀打ちはできないと指摘した。

鈴木孝一氏

株式会社大和総研ホールディングス 顧問
レッドハットユーザー会会長
鈴木 孝一(すずき・こういち)氏

 鈴木氏はさらに、次世代インフラのキーワードとして「止めないインフラ」を挙げ、OpenStackの有効性に言及した。従来のインフラ開発では、開発環境、テスト環境、本番環境の構築からリリースへと膨大な工数を要した。サービスのバージョンアップには、同等の手間をかける必要があった。しかしOpenStackでは、煩雑な手順はいらない。本番環境を稼働させながら、本番環境のコードを流用し、新アプリのインストールなども行った新本番環境を事前に仮稼働させ、リリース・切り替えという流れをすばやく可能にする。
 止めないインフラの実現。リリース時間を限りなくゼロに近づけることで、無駄なくリソースを使えるようにするのがOpenStackだ。
 まだ課題もあるとはいえ、OpenStackが次世代インフラへと進化することはIT業界全体にとって有効であり、次世代サービスの開発スタイルを変える可能性がある。開発者・利用者はともに積極的な参加が必要になるだろう、と鈴木氏は強調した。
 最後にユーザー会会長として鈴木氏は、ユーザー会の会員同士の連携によって実現した事例を紹介し、会への積極的参加を促して、講演を締めくくった。
 
 セミナーの最後にレッドハット執行役員 マーケティング本部長 松原大介が挨拶し、多数参加いただいたパートナー企業をはじめ来場した多くの企業関係者へ感謝を述べた。
 松原はREUG(Red Hat Enterprise User Group:レッドハットのユーザー会)について、レッドハットの製品知識の習得だけではなく、ユーザー同士の親睦・交流の場として、参加社(者)が相互にIT情報の交換をしつつ、各社のITの高度化を図ってもらいたいと念願。会員から寄せられるレッドハット製品への要望は、今後の製品強化に役立てたいと語った。
 また2016年10月5日に開催を予定している「レッドハット・フォーラム 2016」への参加を呼びかけ、セミナーは幕を閉じた。

中部地域のITイノベーションへさらなる貢献を

高橋倫二

レッドハット株式会社
エンタープライズ営業統括本部長
常務執行役員
高橋 倫二

 2015年の九州・中国営業所の福岡市開設に続き、この度、中部地域での顧客サポートのさらなる向上と市場拡大のため中部営業所を名古屋市内に開設しました。これを機に、これまで培ってきたパートナー企業様をはじめ、多くの顧客企業の皆様との関係をさらに深めてまいります。

 ハード・ソフト・サービスを含むIT市場の規模はおおよそ11兆円。その半分程度が東京に集中している状況にあって、東京以外をどうカバーするかは我々にとって喫緊の課題でした。中部営業所の開設は、中部地区のお客様に迅速にサービスをお届けするためのレッドハットの戦略の一環であり、大きなチャレンジになります。

 中部営業所のある名古屋は、多くの自動車製造関連業、電力関連業が集積しています。また約230万の人口を抱え、小売業、サービス業、通信業などの産業も盛んなエリアです。これまでのお客様はもとより、今後はそうした名古屋に拠点を構える企業様へも積極的にアプローチし、レッドハットの製品ポートフォリオへのご理解を広げてまいります。

 具体的には、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を土台としつつ、ミドルウェア関連、クラウド関連製品の拡大に注力します。特にOpenShift、OpenStackといったクラウド製品の優れた特性をご理解いただけるように努めてまいります。サポート面においても、“地元営業所”という地の利を活かし、より緻密なコミュニケーションをお客様との間に築いてまいります。

 ”face to face”によるコミュニケーションの向上——中部営業所を開設した大きな意味のひとつがそこにあります。今後、中部エリアのお客様にとってなくてはならない存在へと成長し、ビジネスイノベーションの実現に貢献してまいります。