ユーザー事例


 製鉄所を横断した国内業界初の全社データベース「JFE統合現品DB」の運用を開始したJFEスチール。同社の次世代サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)の基盤となるデータベース統合に採用されたのが、レッドハットのデータ仮想化製品「Red Hat JBoss Data Virtualization」だ。

小林 健一氏

JFEスチール株式会社
IT改革推進部
主任部員(副課長)
小林 健一

和泉 光雄氏

JFEシステムズ株式会社
東京事業所
販生流システム開発部
基盤グループ長
和泉 光雄

阪上 桂名氏

JFEシステムズ株式会社
東京事業所
販生流システム開発部
基盤グループ
阪上 桂名

背景

全社的なオープン系への移行推進の一環として、
JFE統合現品DBの構築に着手

 2003年に旧日本鋼管と旧川崎製鉄が経営統合して発足したJFEスチールは、積極的なIT投資を行っている。本社の基幹システムを刷新して2006年に「J-Smile」を構築したのを皮切りに、2010年には製鉄所の生産計画システムもオープン系に移行して「JFE-Flessa」として稼働させた。近年はメインフレーム中心からオープン系への移行を推進しており、2016年からは製鉄所の基幹システムの全面刷新にも着手している。
 「JFE統合現品DB」も、全社的に進めるオープン系への大きな流れの一環だ。東日本製鉄所(千葉・京浜)、西日本製鉄所(倉敷・福山)の各拠点が独自に持っていた現品情報に関するデータベースを統合し、一元的に管理・活用できるようにした。現品情報とは製品の仕掛り状況や生産履歴、完成予定であり、「JFE統合現品DB」にはそのすべてが記録される。
 「JFE統合現品DB」の構築に取り組んだ背景について、JFEスチール株式会社 IT改革推進部 主任部員(副課長)の小林健一氏は次のように説明する。「製鉄所のシステムは高炉建設とともに構築された経緯があり、拠点ごとにプラットフォームもDBもバラバラでした。しかし、情報のリアルタイムの把握、顧客接点の強化など全社的な観点から、JFE統合現品DBの構築に踏み切ることにしました」

レッドハット製品を選んだ決め手

データモデルのアプローチに合致したJDV、
エンジニアの技術力も高評価

 「JFE統合現品DB」へのデータアクセスの共通化にあたり、製品選定と事前検証(PoC)を経て選ばれたのが「Red Hat JBoss Data Virtualization」(以下、JDV)だ。JDVを使えば、DBの構造化データとテキストなどの非構造化データを同一に仮想メモリー上に展開して参照・更新・削除する仕組みが、既存システムを変更することなく仮想的に実現できる。
 JFEシステムズ株式会社 東京事業所 販生流システム開発部 基盤グループ長の和泉光雄氏は、JDVを選んだ理由の一つに、同社が推進するデータモデルの考え方との親和性を挙げている。「J-Smile構築の時から、データとアプリケーションを分離したシステム構築を実現するデータモデルのアプローチを徹底してきました。エンタープライズ・サービス・バス(ESB)や他のDB管理方式の導入も検討しましたが、データアクセスのサービス化がしやすく、DB以外のデータも仮想統合できるJDVが、この考え方を踏襲できる唯一の製品と判断しました」
 PoCでは、参照元のホストのDBが文字コードの関係で一部参照できないという想定外の問題も発生したが、レッドハットのエンジニアとの共同作業で解決している。JDV導入決定の際は、こうしたサポート対応や技術力も高く評価された。

レッドハット製品を導入した効果

一日数百万件のDB処理が安定稼働、
生産性・保守性もアップ

 「JFE統合現品DB」は2016年に本格稼働を開始した。JDVにおいても、製品選定からPoC、開発、導入まで約2年におよぶプロジェクトを経て、同じく稼働を開始した。DB処理量は一日に数百万件以上、年間レコード数は3億5000万件。各製造拠点からの膨大な現品情報をリアルタイムに集約している。
 業務面では、DBアクセスの共通化によって生産性が向上した。運用面ではJDVによる仮想統合でテスト範囲が限定できるなど、保守性もアップした。
 開発の観点からは、積極的にOSSを取り入れるメリットも実感しているという。JFEシステムズ株式会社 東京事業所 販生流システム開発部 基盤グループの阪上桂名氏は、「OSS導入はコストメリットも大きいのですが、新しい技術をすばやく取り入れてシステムに反映し、ビジネスの競争力向上に貢献できる点がより重要だと感じています。OSSの利用では我々ユーザー側の技術力アップが欠かせません。今回のJDV導入を通じて、レッドハットの支援を受けながら、我々自身が知識を蓄積して技術を磨けたことも大きな収穫でした」

今後の展望/レッドハットへの期待

OSSの適用範囲拡大へ、
レッドハットの高度なサポートに期待

 「JFE統合現品DB」は今後、JFEスチールのSCMの中核を担う基盤として運用拡大が見込まれている。膨大で詳細な現品情報と従来から保有している営業情報を組み合わせて解析し、全社的な課題の発掘に役立てるなど、より汎用的なデータ活用への期待も大きい。
 また、今回のJDV導入の成功はOSSの適用範囲拡大の後押しにもなっているという。この点について小林氏は、「JDV導入でOSSへの抵抗感が少なくなりました。業務系システムへの採用には、いわゆる基盤系システムと比べるとまだ慎重ですが、今後はより有力な選択肢となってくる」と語る。
 「レッドハットには高品質のサポートを提供していただきました。OSSの導入には各製品や技術の特徴を正確に踏まえた作業が必要なので、我々だけでは難しい部分が多々あります。高度なスキルを持った技術者が、我々の立場に寄り添ってサポートしてくれるという安心感がありました。今回の範囲にとどまらず、当社の事業を支えるインフラ基盤としての提案やサポートを引き続き期待しています」(小林氏)

JFE統合現品DB 連携概要


関連リンク

JFEスチール株式会社
Red Hat JBoss Data Virtualization