ユーザー事例


 航空会社向けに整備や修理、オーバーホールのサービスを提供する世界最大の独立系会社、ルフトハンザ テクニックが、航空業界向けデジタル・プラットフォーム「AVIATAR」の構築に着手した。その開発と運用サポートのため同社では、レッドハットのエンタープライズ・オープンソースソフトウェアをベースとしたハイブリッドクラウドインフラを構築。AVIATARチームは、アジャイルDevOpsアプローチ、自動化、社内とサードパーティの統合、セルフサービスの機能を使用して、データとフィードバックに基づいた迅速な反復開発ができるようになり、その結果ルフトハンザ テクニックでは、世界の空運の最適化を支援する革新的なデジタル・プラットフォームの提供が可能となった。

本部
ハンブルグ(ドイツ)

業種
航空サービス

従業員
26,000人以上

子会社
35

一日の航空機検査
1,700

メリット
セルフサービス機能、自動化、アジャイルDevOpsによる迅速なアプリケーション・ワークフロー
社内インフラとサードパーティ・ソリューションの統合による高い柔軟性
整備、修理、オーバーホールなど参加航空会社における数百万ユーロのコスト削減見込

 

航空会社の技術運用の向上

 航空業界に対する顧客と乗客の期待は常に高く、フライトの遅延や欠航は、経営面とブランドイメージの双方で大きな損失となる。このようなサービスの中断を回避するカギは予測分析であり、航空会社がデータを使用して整備作業を効率よく準備し、予定を組むのに役に立つ。
 ルフトハンザ テクニックは、整備・修理・オーバーホール(以下、MRO)のサービスを、民間航空会社および国家元首やVIP専用ジェット向けに提供する世界最大の独立系会社だ。業界の課題に対するソリューションを開発するため、同社のアプリケーション開発とUXチームは、データ・サイエンティスト、航空機エンジニア、また他のエキスパートと共同プロジェクトをスタートさせた。「AVIATAR」と呼ばれるソリューションは、開発と運用において、マテリアル・プランナー、エンジニア、他のエンドユーザーに向けてデジタル製品をサポートするもので、彼らが適切に事象を予測することで時間とコストの節約につながる。
 AVIATARを構築・サポートするため、ルフトハンザ テクニックのチームは、航空機センサーデータなどの業界データに加えて飛行計画や遅延情報などの運航データを格納した共用リポジトリを使用して複数のアプリケーションを稼働できる、柔軟性が高く拡張可能な環境を必要としていた。また、オンプレミスからクラウドインフラに徐々に移行することも視野に入れていた。
 「当社の顧客データをルフトハンザのインフラから切り離して管理することが、オープンかつ中立であり続けるポイントです」と、ルフトハンザ テクニックのAVIATARテクノロジー・インフラ責任者、TOBIAS MOHR氏は話す。
さらにチームは、アジャイルのDevOps開発アプローチを採用することにした。「新機能を一日に何度もリリースし、フィードバックを早く引き出したかったのです」(MOHR氏)

 

オープンソースによる
クラウドプラットフォームの構築

 ルフトハンザ テクニックは、AVIATARの開発と運営をサポートするために、オープンソース技術を用いること、またハイブリッドクラウドに移行することを模索していた。「AVIATARのオープンなアプローチとオープンソースのモデルには、多くの共通点がありました。私たちはプロプライエタリ市場ではなく、オープン市場のプレイヤーでありたいと思っています。私たちは業界をサポートしたいのです。その目標は、オープンソースの活動が成し遂げたいものとよく似ています」ルフトハンザ テクニックのAVIATAR アプリケーション開発/UXシニア・ディレクター、Johannes Hansen氏は語る。
 かつての経験に基づき、チームはレッドハットのエンタープライズ・オープンソース・ソフトウェアの採用を即断した。詳細は下記のとおりだ。

 

Red Hat Enterprise Linux:堅牢なエンタープライズクラスのLinuxや、コンテナテクノロジー基盤を構築できる
Red Hat OpenShift Container Platform(Microsoft Azure上で稼働):チームのDevOpsと継続的な改善アプローチをサポートし、新しいインフラのコンポーネントを構築、設置、稼働、統合できる
Red Hat Gluster Storage:OpenShift Container Platformに、柔軟性が高く、拡張可能なクラスターベースのストレージを提供できる
Red Hat JBoss Enterprise Application Platform(Linux仮想マシン(VM)とOpenShiftで稼働):AVIATAR JavaTMとJava Enterprise Edition(Java EE)アプリケーション用のバックエンドを提供する
Red Hat JBoss Data Grid:主要な予測分析機能用に、メモリ内のデータを迅速に読み書きするとともに、計算とクエリを並列で行う
Red Hat JBoss Fuse:社内およびサードパーティのデータストレージのソースを統合できる
Red Hat 3scale API Management:保護されたセルフサービス・アプリケーション・プログラム・インターフェイス(API)管理機能を開発者に提供できる
Red Hat Ansible Tower:再利用可能なインフラのコードを生成・実行し、Azure、Gluster、他のインフラのコンポーネント用のプロビジョニング・タスクを自動化できる

 

 AVIATARチームは、マイクロソフトとレッドハットとの協働により新しいハイブリッドクラウド環境を構築し、プラットフォームの初期バージョンを3カ月余りでリリースした。現在はさらに多くのアプリケーションと予測アルゴリズムが稼働しており、航空会社の運航の混乱を防ぐのに役立っている。
 このソリューションは、2017年のMRO Americas Conferenceで初公開され、高い評価を得た。またオープンソースのインフラによる同システムの成功は、ルフトハンザ テクニックの2018年レッドハット・イノベーション・アワードの受賞にもつながった。

 

アプリケーション開発と
リリースの高速化

より効率的なDevOps開発
 ルフトハンザ テクニックのDevOpsチームにとって、レッドハットのソフトウェアで構築した新たなハイブリッドクラウドインフラを導入したメリットの一つは、自動化からセルフサービスのプロビジョニングまでの各種機能を使用した、AVIATARの新機能とアプリケーションの共同開発のしやすさだ。
 Red Hat Ansible Towerにより、DevOpsチームのメンバーは、再利用可能なコードとインフラのコンポーネントを使用して、環境とリソースを使えるよう自動的に設定している。インフラ操作に関する幅広い専門性は不要だ。例えば、データ・サイエンティストは、今では必要に応じて大量のコンピュート・クラスターを自由に増やせる。この効率性は、AVIATARのDevOpsチームが迅速にテスト環境を作成し、フィードバックを受けるのに有効だ。
 「もし、手動でセットアップするインフラを使っていて、何かを変更したいとしたら、それを実行する人の作業を待たなければなりません。それとは対象的に、私たちはコードとしてインフラを持っており、いつでも再現が可能です。インフラチームは、設定用のAnsibleプレイブックを起動するだけでよいので、本当に重要な作業や興味深い作業に集中できます」とAVIATARアーキテクトでプロダクト責任者のThorsten Pohl氏は述べる。「Ansibleは、Azure VMとサービスのセットアップから、OpenShiftクラスター、Glusterストレージ、サードパーティのサービスのインストールまで、すべてを自動化します」
 自動的に拡張されるRed Hat Gluster Storageのコンテナネイティブのストレージと、Red Hat JBoss Data Gridによる高速データ検索によってサポートされる、再利用可能でモジュール化されたマイクロサービスベースのインフラのコンポーネントによって、AVIATARは、数カ月あるいは数年も待たずに、数週間で新しいアプリケーションをリリースできる。「アイデアを思いついた瞬間に、私たちは製品の構築を開始できます。この軽快さは、今まで決して経験したことがないものです」とMOHR氏は語る。
 これらの改善の結果、AVIATARチームは、サービスを中断することなく変更を加えられ、変化する要求に迅速に対応し、エンドユーザーが必要とする予測データを必要なときに確実に入手できるようになった。

柔軟性と統合の向上
 レッドハットのエンタープライズ・オープンソース・ソフトウェアを使用することで、AVIATARチームは社内の共同作業だけでなく、業界の組織、オープンソース技術コミュニティ、他の社外組織との共同作業を改善している。「航空業界は、むしろプロプライエタリな世界です。AVIATARは、他業界のプレイヤーのアイデアを取り込み、彼らを引き込む、オープンかつ中立な技術プラットフォームを提供します」と、MOHR氏は話す。「オープンソースには常に大きなコミュニティの存在があり、プロプライエタリな技術に比べてはるかに速く製品が進化するからです」
 レッドハットの製品は、パートナーまたは顧客がどのようなテクノロジーを使用しているかに関わらず、AVIATARがそれらと柔軟に統合できるようサポートしている。JBoss Fuse、3scale APIゲートウェイ、Red Hatのシングルサインオン(SSO)など、オープンスタンダードかつ柔軟なソリューションを使用することで、AVIATARプラットフォーム上のアプリケーションに使いやすさと信頼性を提供する。顧客とパートナーは、統一した使用感を維持しつつ、好みのソリューションとツールを使用、提供することが可能だ。3scale API Managementは、外部開発者との安全な統合と共同作業をサポートするために、同社のAPIへのアクセスを制御する。コンテナ内にアプリケーションをデプロイし、コンテナネイティブのソリューションを使用することで、ルフトハンザ テクニックは、AVIATARの機能をどんな環境にでも提供できるのだ。
 「例えば運航や燃料効率、ケータリングなど、航空の他の領域で強い専門性を持つサードパーティの開発者とも共同開発できます」(Hansen氏)。「お客様はAVIATAR上で稼働する異なるソリューションから選択することができます。好みのプロバイダーがいれば彼らと協力して簡単に統合し、AVIATAR上で稼働できるのです」
 これらの改善は、より良い整備予測と他の見識に対するエンドユーザーの要求に対して満足するサービスを構築するために、AVIATARチームがより効率的に協働できることを意味している。

期待できるコストの節減
 レッドハットのインフラがサポートするAVIATARによって、ルフトハンザ テクニックは、航空会社ごとに数百万ユーロ相当にのぼる多大なMROコストの削減を見込んでいる。
 「過密なスケジュールと乗客の高い期待によって、航空便の遅延に直接関係するコストは急速に増加しています。私たちはAVIATARで、そうしたコストの莫大な量を取り除こうとしています」(Hansen氏)

 

イノベーションのための
新たな手法の探求

 ルフトハンザ テクニックは、技術的なプロセスを自動化し、ソリューションのユースケースを展開することによって、AVIATARの継続的な改善を計画している。これにより、航空会社がデジタルデータの分析から引き続き洞察を得られるようサポートしていく。
 「当社には、数十年のエンジニアリング実績に基づく大きなユースケースのパイプラインがあります。多様なニーズを解決する、多くの新しいアプリケーションをAVIATAR上に実装しようとしています」(Hansen氏)。「そのリストは日増しに長くなっています。なぜなら、お客様との対話により、お客様と共に作っているからです。当社はお客様のさまざまなフィードバックに対応しています」
 アジャイルの柔軟性がある新しいハイブリッドクラウドインフラを使用して、同社は目標とする『航空旅客の快適性の向上』を支援する業務に注力することができる。「乗客が定刻に帰宅し、家族とより多く時間を過ごせるようにすること、これこそ私たちがAVIATARに感じるやりがいです」とHansen氏は語る。「そして実際に、乗客の快適性は向上している。実に誇らしいことです」