THE ENTERPRISERS PROJECT


Inc.com ビジネステクノロジーライター 兼 コラムニスト
Minda Zetlin
2017年1月19日

レガシー・ソフトウェアに多く囲まれ行き詰まっていませんか?でも、全部を一掃して心機一転しようとは思わないでください。このようにアドバイスしているのは、デジタル・プラットフォーム企業のSoftware AGでCTOを務めるWolfram Jost博士です。この2回シリーズとなるインタビューの第1回目でJost博士は、デジタル・ディスラプションに確実に応えながらレガシー・テクノロジーを適切に取り扱っていくための貴重なアドバイスを聞かせてくれます。

The Enterprisers Project(TEP):デジタル・トランスフォーメーションはIT部門の当初の意思決定に縛られるべきではなく、そしてまた現実問題として、あらゆる大企業がレガシー・テクノロジーという重荷を抱えているとおっしゃっていますね。速やかに前に進んで行くために、この重荷と新たなニーズへの対応の間のバランスをどのようにとっていけば良いのでしょうか?CIOはどのような場合にシステムの一掃と刷新を決意し、また、どのような場合には既存の環境を活かし、もしくは統合して物事を進めていくのが妥当だと判断するべきなのでしょうか?

Jost:レガシー・テクノロジーを語る場合に、重荷という言葉を使うのは誤りだと私は思います。ハードウェアを長い間使い続けていれば壊れるのは当然だと言われてきました。でもソフトウェアは長い間使い続けてきても、機能そのものは劣化しません。ですのでレガシー・アプリケーションも機能はするのです。これは重荷ではないのです。これは過去半世紀にわたって積み上げられてきたビジネス上の遺産なのです。

TEP:しかし問題に変わりはありませんよね?過去半世紀にわたって使い続けてきたテクノロジーで今日のビジネスに応えるにはどうすれば良いのでしょうか?

Jost:おっしゃる意味はわかります。デジタル化の波やIoTに応えるには新たなビジネス・プロセスが必要です。しかし、何十年にもわたって開発されてきたソフトウェア・ソリューションを安直に一掃し新しくすることは、大切なものを不要なものと一緒に捨ててしまうような馬鹿げた行為だという事を忘れないでください。

全世界で3,500億行のCOBOLコードが利用されていると考えられており、1兆ドルのビジネスに相当する最大300億のトランザクションが日々処理されているのです。アメリカだけを見ても、95%のATMトランザクション、80%のPOSトランザクション、90%の旅行のブッキングでCOBOLが利用されています。ごく一般的なアメリカ国民は、おそらく日に10回はこの言語でなにかを処理していることになります。

このようにパフォーマンスが高く堅牢で安定した効率的なアプリケーションを一掃し刷新することは、リスク的にも、そしてコスト的にも、今一度同じ言葉で表現させてもらえば「馬鹿げた行為」だと言えます。一般的にレガシー・アプリケーションと呼ばれるこれらに含まれているビジネス・ロジックは長い間をかけ培われてきたものであり、容易には置き換えられないほどの大きな価値を持っています。このIT基盤はどのようなハイプサイクルの上にも属さず、世の中が円滑に回ることを助け、また今後の100年も私たちと共に歩んでいくはずのものです。

そしてまた、これら実績あるよく枯れたアプリケーションをスムーズに使い続けるために、新たな世代のプログラマーを探すという世代交代の問題も存在します。現在、COBOLプログラマーの平均年齢は55歳です。もちろんこの世代交代は、当然のごとく他の全て言語にもあてはまる問題です。「Javaは私の世代のCOBOLであり、Goはそれを継ぐものだ」というような記事を私はすでに目にしたことがあります。これはIT業界において繰り返し発生する問題なのでしょう。

TEP:このCOBOLやその他幅広く利用されている言語の問題は、デジタル・トランスフォーメーションにおけるアキレス腱とも思えます。CIOや他のリーダーは、このようなトランスフォーメーションによって享受できるものが、それに対する投資や引き起こされたディスラプションに値するか否かをどの時点で見極めるべきなのでしょうか?

Jost:まず「どの時点で」と問われるなら、それは今です。そして「値するか否か」は、シンプルにビジネスが成り立つか否かで判断できます。私たちは、かつてなかった規模のIT革命の最前線に立っているのです。エンタープライズはアイデアを模索し、私たちの生活をより良く変えてるためのアプリケーションを開発します。

今日のマネージメント・チームが妄想的に取り憑かれている一番の悩みはデジタル・ディスラプションでしょう。世の中を変えてしまうような数多くのテクノロジーが登場しているので、役員会の面々の心中に多少の杞憂があっても仕方ないでしょう。結局のところ、何があっても必要こそが発明の母であることに変わりはないのです。

しかしデジタル・ディスラプションは、デジタル・イノベーションにおける単なる1つのムーブメントに過ぎません。デジタル・ディスラプションは、効率化のために非効率を生み出します。次のビッグバンを生み出すために、マクロ・レベルやエンタープライズ・レベルでリソースを再配置します。

TEP:ITやビジネスのリーダーは、既存のレガシー・テクノロジーを活かしながら、この変化をどのように管理すれば良いのでしょうか?

Jost:エンタープライズは全て、明確なデジタル戦略を持たなければなりません。デジタル戦略は未知なものに対する戦略なのです。これはCEOにとって最も難しい課題です。しっかりと押さえておかなければならない1つ目の要素は、この5年間で起こった劇的なまでの顧客へのパワーシフトです。

複数のチャネルによるコミュニケーションややり取り、製品やサービスのパーソナライゼーション、プロダクト・デザインへの顧客の関与、グローバル化した顧客への対応や世界規模での価格戦略、デジタル・サービスへのアドオンの提供、そして場所や時間に関係なく、世界中で即座に市場の意見が繋がり広がって行く様は全てこのシフトの例なのです。

2つ目の要素はインダストリアル・インターネットです。インダストリアル・インターネットは、社会や顧客に対するデジタル化のフェーズよりも更に大きな影響を世の中に及ぼします。そして当然ながら、そこに生まれる機会は相応に大きなものとなるでしょう。私たちはまだその胎動期にあり、インダストリアル・インターネットにおける「誰のための」「何のために」「いかにして」「なぜ」といった疑問や課題は、まだまだ手付かずの状態です。CEOが、その大部分は未知であり恒常的に進化していく未来に向けた戦略を用意しなければならないと私が言う理由はここにあるのです。

最も大きな脅威となるのは、現状に甘んじて何も行動を起こさないことでしょう。デジタル化を止めてコストを節約するのは、時計を止めて時間を節約しようとするのと同じです。何もアクションを起こそうとしない者は、デジタル進化論(Digital Darwinism)の中で淘汰されてしまうでしょう。

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