THE ENTERPRISERS PROJECT


Inc.com ビジネステクノロジーライター 兼 コラムニスト
Minda Zetlin
2017年1月25日

デジタル・トランスフォーメーションとは、実際には何を指すのでしょう?デジタル・プラットフォーム企業のSoftware AGでCTOを務めるWolfram Jost博士は、多くのCIOやCTOはテクノロジーだけに焦点を当ててしまい、大局を見誤っていると言います。2回シリーズとなるこのインタビューの第2回目では、多くの企業が見落としていることを博士が説明してくれます。

The Enterprisers Project(TEP):企業がデジタル・トランスフォーメーションに取り組む際に犯してしまう最も大きな失敗とは何でしょうか?

Jost:最も大きな過ちは、デジタル・トランスフォーメーションがテクノロジーに関する事だけだと思い込んでしまうことでしょう。市場における企業のあり方を変えるために、デジタル・トランスフォーメーションが革新的なデジタル・テクノロジーを必要とするのは当然のことです。これを考えれば、単なるアウトソースや一般的に市販されているソフトウェアの利用は選択肢の中に含まれてきません。5年前のビジネス・プロセスをベースにしたソフトウェアでは、デジタル・トランスフォーメーションの基礎となる部分を提供できないのは当然でしょう。革新的なテクノロジーに加え、デジタル化における本当の意味での課題は、物理的な世界とデジタルの世界をつなげる新たなビジネス・モデルやビジネス・プロセスを作り上げることにあると言えます。

従来型のビジネスが生き残っていくために必要としているのは、インハウスにおけるソフトウェア・イノベーションやその開発能力の育成と強化なのです。企業競争における優位性をアウトソースする以前にまで時計の針を戻し、新たな道を歩むのです。イノベーションを生み出す力を、再び社内に取り戻さなければならないのです。

TEP:ほとんどの企業にとってアウトソーシングやSaaS(Software-as-a-Service)は過去数年にわたって成長を続けてきているトレンドです。どのようにすればこのトレンドを覆す事ができるのでしょう?

Jost:まずはトップの人間が姿勢を示すことでしょう。ITによるイノベーションは、現在たまたま世間で注目を浴びているだけなのです。CEOが先頭に立ち、インハウスでのアジャイルなソフトウェア開発や自社内におけるソフトウェア・アーキテクチャのノウハウを活かしたエンタープライズ・イノベーションを鼓舞するべきなのです。あらゆるビジネスがソフトウェア・ビジネスへと変化していく中で、全てのエンタープライズはソフトウェアを駆使して自らの競争力に磨きをかけていくことが必須とされているのです。

そして次に、自らの顧客への影響を第一に考えて行動を起こす事です。デジタル化によるメリットを商品として販売したいのであれば、顧客にフォーカスするのです。それは顧客のエクスペリエンスを変え、顧客の人生をシンプルに変えることなのですから。ここがあなたとあなたの顧客との間を隔てているディスラプションのスタート地点なのです。この分水嶺でディスラプションとは何かを履き違えてしまうと、顧客との間に大きな溝ができてしまうのです。ですから、もしここから第一歩目を踏み出さないのであれば、それはビジネス・リスクを大きくするだけでなく、大きな成長の機会さえも失ってしまうことを意味しているのです。あまりにも多くの企業がビジネスのディスラプションではなく、更なる効率化だけを目標に物事をスタートさせてしまっているのです。

TEP:効率化についてですが、プロセスを簡素化することがデジタル・トランスフォーメーションにおける大きな課題だとご自身で書かれていますね。そのためには、自らの手で自分達の仕事のやり方を変える必要があります。ITリーダー達はどのようにしてこのような変化を促し、それが確実になされれていることを確かめれば良いのでしょうか?

Jost:つきるところ、人、そしてビジネスと物をまったく新しいやり方で組み合わせることなのです。トランスフォーメーションや変革は、当然ながら人によってドライブされるものです。変化を生み出していくためには、透明性をもって適切な人材を正しいポジションに配置することが必須となります。ソフトウェア・ベンダー達は、そのものが変化を阻害しているとも言えます。自らの市場ニーズに応えるため、自らのビジネスを押し進めるため、また、自らのビジネス・モデルに適合させるために、私たちのソフトウェアを導入している顧客は何かしらの変更を加えています。こういった現実を従業員達と継続的に話合い、自社が将来どのような立ち位置でいられるのかを示し、オープンな組織を作り上げて変化を促すのです。

トランスフォーメーションにおいて、最も重要な要素となるのは人々に腰を上げさせることなのです。私たちは、全てのエンタープライズや国々、そしてこの地球上の全ての人々ポジティブな影響を与えるトランスフォーメーションの最先端に立っているのです。私たちのモットーである「想像し、信じ、そして実現する」はまさにこれを反映したもので、また、これらは変革の管理において私たちが最重要視している事柄なのです。正しいことを効果的に行い可能となる建設的な未来を想像し、自分たちがその行動を起こせると信じ、そして自らの手で達成した功績を讃えるのです。功績を讃えることがとても重要なのです。疑念を払いのけ、ムーブメントを起こすのです。

TEP:現在デジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいるCIOやCxOにできるアドバイスは?

Jost:男性でも女性でもかまいませんが、大志を抱いたCDO(Chief Digital Officer)をアサインすることでしょう。次々と登場する新たなITテクノロジーに敏感で、なおかつそれらのテクノロジーを巧みに組み合わせてビジネスをデジタル・ビジネスへと変えることが可能な、多角的なアプローチを取れる人材を探すのです。もちろん、これは自然な流れでCIOの役割の延長線上にあるとも言えます。

CDOはデジタル・エンタープライズの中枢を担い、様々なビジネスにおいて成功の鍵を握る存在なのです。その理由は?なぜならデジタル企業やデジタルによる破壊的創造を生み出す者は、ソフトウェア上のビジネス・モデルをベースにしてデジタル世界と物理世界を結ぶからなのです。ですから、ソフトウェアがデジタル世界と物理世界を繋ぐと考えれば、CDOがITとビジネスを繋ぐのだと考えてください。このソフトウェアとCDOは、同じコインの表と裏なのです。

デジタル企業はソフトウェアをベースにして、拡張されたビジネス・モデルや、まったく新しいビジネス・モデルを作り出すことが可能となるのです。これらは、今まで存在しなかったデジタル・カスタマー・エクスペリエンスを実現できるのです。車輌や工場、機械や機材を一切所有しな新しいタイプのデジタル企業がこれを成し遂げてきたのを私たちは見てきました。このソフトウェア・プラットフォームだけをベースにしたビジネス・モデルによって彼らは機敏に動くことができ、その結果驚異的な成長を遂げることが可能になっているのです。

TEP:ソフトウェア・プラットフォームのみを用いたモデルがあれば既存のエンタープライズも野心的なスタートアップ企業と同等に戦うことができるのでしょうか?

Jost:デジタルを引っさげた新たな挑戦者が、既存のエンタープライズの持っている顧客との関係性を当然のように乗っ取ってしまう訳ではありません。多くの実績と経験を備えたエンタープライズも、自らのデジタル・ソフトウェア・プラットフォームによってデジタル化された対抗手段を持つ事が大事なのです。今日の挑戦者と同じ能力を備えることで、恐れをなすことなく応戦することが可能になるのです。そしてここで私の言うところの大志を抱いたCDOが登場するのです。デジタル戦略を企業戦略に変えるのであれば、全ての重役会は専門知識と強い意志を持ったこの人材が必要なのです。

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