THE ENTERPRISERS PROJECT


Inc.com ビジネステクノロジーライター 兼 コラムニスト
Minda Zetlin
2017年2月22日

多くの企業がデジタル・トランスフォーメーションに取り組んでいます。しかしそれがどれくらいの期間を要し、またそれを実現し、維持していくためにどれほどの努力が必要かということについて正しく理解できている企業は多く有りません。LenovoのCIOであるArt Huは、PC市場がトランスフォーメーションしていく中でこの現実を学びました。今回のThe Enterprisers Projectのインタビューでは、デジタル・トランスフォーメーションがLenovoをどのように変えているのかについてHuが説明してくれます。

The Enterprisers Project(TEP):Lenovoはデジタル・トランスフォーメーションのプロセス中で、今どの段階まできているのでしょうか?

Art Hu:すでに、Lenovoのデジタル・トランスフォーメーションの取り組みは数年目を向えています。私たちは、PC企業からモバイル・ビジネスと大規模なデータセンターを備えたデバイス+クラウド企業へとトランスフォーメーションしてきました。現在Lenovoは事業買収に伴う主要なビジネス統合の波を乗り切り、自らのトランスフォーメーションに更なる拍車をかける段階に到達しています。

TEP:これまでのプロセスにおいてどのようなことを学ばれましたか?

Hu:私たちがこれまでに学んだ大切なことは、デジタル・トランスフォーメーションという変革には、ある一定の期間を要するという企業全体を通した認識が必要だということです。デジタル化によってなにが達成されるのかという共通のビジョンを持ってデジタル・トランスフォーメーションに挑む必要があるのです。デジタル・トランスフォーメーションは小規模なもので、時間を要せず速やかに終る取り組みだと誤解している人たちもいます。もちろん、部分的に見ればそれは間違ってはいません。しかし、それらの取り組みが企業内全体に分散し、分断化された状態のままだとトランスフォーメーション全体としての成功はありえないのです。

またビジネスのスピードが上がるにつれ、旧来のやり方に固執している企業は競合に遅れをとることになります。今日の流通を理解し、前へ進むペースを維持し、そして刻一刻と変化していく市場の状態や消費者のニーズにLenovoが応えていけるよう、私たちはチームとして新たな習慣を身に付けました。

TEP:そこにかかるコストや、慣れ親しみながらこれまで培ってきたビジネス慣習を変えることをよしとせず、このような変化に拒否反応を示す人たちも企業や組織の中にいると思います。変化に対するこのような抵抗をチームが乗り越えるために、CIOとしてどのような策をとられましたか?

Hu:おっしゃる通り、変化への抵抗はデジタル・トランスフォーメーションにおける課題の1つです。CIOとしての私の職務の中には、何が問題なのかを明確にしつつ、誰もが得心するストーリーを使ってデジタル・トランスフォーメーションの必要性を説き広めていく事も含まれています。このようなビジョンがなければ、企業における長期戦略とデジタル・トランスフォーメーションがどのように結びつくのかを人々は理解できません。ですから私は、私たちの未来がどのようなものであるか、そしてデジタル・トランスフォーメーションが生み出す価値がどのようなものであるかといったビジョンを機会がある度に共有しています。しかしこのようなビジョンを広めていくことは私だけでは不可能で、現場からの力強い後押しがどうしても必要なのです。ですから自らのチームに向けてデジタル・トランスフォーメーションを分かりやすく説明して理解を促し、彼らを変革のための重要な立役者に変えていくことから始めました。

まず最初は、デジタル・トランスフォーメーションは脅威ではなく機会であるということの理解を広めました。私は、これがITチームだけの問題ではないというメッセージに焦点を当てました。デジタル化はITに関連したグループやチームに関係することではなく、自社内のあらゆるチームやその中の全てのチーム・メンバーに関係するというメッセージです。デジタル化は新たなスキルを学び、また新たなツールに触れ、最終的に将来のより良い結果に結びつくる絶好の機会であるというメッセージはその中でも代表的なものです。このメッセージが偽りでないことを表すために、私たちは業界内の他社がどのような取り組みで成果を上げてるかの情報を共有し、自社のチームにも新しいアイデアやテクノロジーに積極的に触れることを奨励しているのです。

TEP:言っておられるのは、ITとビジネスとの間におけるオープン・コミュニケーションの実現ですね。どのようにして、このオープン・コミュニケーションを実現されたのでしょうか?ビジネス側の人材とIT側の人材が互いにコミュニケーションできているのは、どのようにして確認していますか?

Hu:これがうまくいくのは、自らが例を示してトップダウン式の体制を作り上げた場合だけです。自らが介入してリーダーシップを通じたビジョンの共有がなかった場合、チームのこの働きが成功するとは思えません。デジタル・トランスフォーメーションがビジネス全体を改善するための重要な鍵だと、自社のすべてのエグゼクティブが理解している必要があるのです。戦略に根ざしたトップダウン式の体制がなければ効果は見込めないのです。

一度このコミュニケーションの図式ができてしまえば、それは自然に組織の中全体へと浸透していきます。計画と実行のためのステージができ上がるのです。このやり方の一部として全てのレベルがビジネスと繋がってフィードバックを得、そして必要に応じて適路線の修正を行うメカニズムも組み込んでいます。

TEP:デジタル・トランスフォーメーションにおいて成功の指標を設けるのは難しいことですが、それはとても重要なはずです。Lenovoでは何をもって新たなテクノロジーが成功したと評価するのでしょう?

Hu:従来のプロジェクトとデジタル・トランスフォーメーションのタイムラインは異なります。デジタル・トランスフォーメーションの場合は不確定要素が数多く存在するため、前もって多くの投資を行いたくないというのが実際でしょう。複数年の計画に対する従来のプランニング手法や従来のROIの考え方では上手くいかないことを理解すべきです。もしもデジタル的なトランスフォーメーションを考えているのであれば、従来のROIの考え方の多くが通用しません。ですからROIというものを、もっと大きな視野で捉える必要があるのです。

カスタマー・エクスペリエンスに大きく焦点を当てることで、私たちのROIはより戦略的なものに変わり、そして財務的な指標だけにとどまらずもっと幅の広いものになったのです。私たちは、他のビジネスKPIもカスタマー・エクスペリエンスに根ざしていることを確実にし、また顧客満足度がROIの一部として見なされていることを担保する必要があります。デジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトにおける価値というものが何を意味するのかもっと大きな視野で捉え、これまでの考え方を改めるべきなのです。なのでデジタル・トランスフォーメーションの必要性が公に広く認められて、また企業の戦略の中に組み込まれていても、それがどのような価値をもたらしてくれるのかを上席のエグゼクティブが理解できていなければ完全な成功を収めたとは言えません。価値を伝え、デジタル・トランスフォーメーションを実現するためにITが備え持った能力を広げるために、コミュニケーションはとても重要な役割を果たしているのです。

TEP:自社のデジタル・トランスフォーメーションに取り組もうとしているCIOになにか伝えたいことはありますか?

Hu:あらゆるものに適用できるデジタル・トランスフォーメーションのためのテンプレートやガイドマップは存在しません。全ての企業は、自らの手で、自らにとってふさわしい方向性を見つけ出す必要があります。私なら、デジタル・トランスフォーメーションに取り組もうと自社が決断したのであれば各部門は別々の組織として考えてはいけないということをCIOにアドバイスします。気がついていなくても、あらゆる部門は現実には全て繋がっているのです。人、プロセス、テクノロジーの間にある壁を取り除く事によて、より良いカスタマー・エクスペリエンスは実現できるのです。

私たちは、自社を可能な限りベストなものにするという共通のゴールを持っています。デジタル・トランスフォーメーションを通して、ITはビジネスに成功と繁栄をもたらすことができるのです。

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